同時テロに思う
(yahoo
写真ニュースより)
7月7日、牽牛(けんぎゅう)と織姫(おりひめ)の二ツ星が逢瀬を楽しむといわれているその日、イギリスのグレンイーグルズには世界の主要国首脳たちが集まっていた。あたかもその日を狙ったかのように、首都ロンドンで同時多発テロ
が発生した。金融街の中心地・シティーを走る地下鉄とロンドン名物の二階建てバスがテロの標的となったのだ。
2012年夏のオリンピック開催国が決定し、お祭り気分のイギリス国民は一転して地獄絵を見ることとなった。犠牲者の数は50人を超し、さらにその数は増えそうだと報じられている。

イラクは今
一方、同時テロから5日が経過した12日、我が国の新聞各紙はイラクで戦争開始以来、戦闘行為やテロの犠牲者となった民間人の数が3万9000人に達したことを報じている。スイスのジュネーブ高等国際問題研究所の報告によって明らかになったもので、その数は、これまでに複数のメディアが報じた死者の数から推定されていた死者を1万5000人も上回るものであった。
テロ事件に比べ遙かに小さな記事に着目した人は少なかったかもしれない。しかし、そこに書かれていた内容は見過ごすことのできるものではなかった。なぜなら、その数3万9000人を戦争終結時からの経過日数で割ってみると、実に、1日当たり60人という死者の数字がはじき出されるからです。
なんと、イラクではロンドンのテロで亡くなった犠牲者を上回る人々の命が、日々奪われ続けていることになるのだ。
同時テロ以降、連日、犠牲者を悼む姿を世界中のマスコミが伝えている。事故現場には花が捧げられ、教会では哀悼のミサが行われている。しかし悲しいことに、同じ罪なき犠牲者でありながら、イラクの死者には花束もミサも捧げられることはない。大量死が日常化してしまったイラクでは、もはや花束やミサは
,死者にとって無縁なのだ。
16日、バグダット南方の町ムサイブで起きた自爆テロがそのいい例だ。死者が100人に達し、ロンドン同時テロを遙かに上回る悲惨な事件でありながら、新聞各紙はわずかな誌面しか割いていない。人の命に変わりはないはずなのに、おかしなことである。
(被害者名簿に家族の名を探す)
テロの元凶を探る

イラクの惨状を知る人でも、ロンドンのテロと同規模の犠牲者が2年間にわたって日々繰り返されている事実を知らされると、今更のようにイラクの置かれた悲惨な状況を再認識することになるはずだ。
こうした悲惨な地獄絵をイラクにもたらした元凶がアメリカの利己主義と大国主義によるものであることは先刻承知のことだが、イラクの惨状と世界各地に飛び火するテロリズムの驚異を目の当たりにすると、改めてアメリカの仕掛けた大義名分のない戦争が
、人類に及ぼした「負の遺産」の大きさを知ることになる。
「
IQ(知能指数)80の男」と揶揄(やゆ)されるブッシュや、「戦争大好き人間」ラムズフェルドらが言うセリフはいつも一緒だ。悪いのはアルカイダであり、オサマビンラディンだと! つまり、彼らの引き起こした9・11事件こそがアフガン戦争やイラク戦争の元凶だというわけだ。
しかし、彼らの主張がいかに欺瞞(ぎまん)に満ちたものであるかは、テロリストたちの「ルーツ」をたどってみればすぐにわかる。アメリカが目の敵にしているオサマとフセインが、実はアメリカ自身が産んだ落とし子だったことが明白になってくるからだ。
ことの始まりは1960年代にさかのぼる。冷戦と呼ばれた米ソ対立の中で、アフガニスタンに進行したソ連軍を叩くために、アメリカの
CIAはパキスタンと組んで、2万人弱のイスラム戦士を集めた。その後、CIAは彼らに残虐なテロの手口を教え、最新式の兵器や武器を与えてソ連兵へのテロを断行させたのだ。その結果、アメリカの思惑通りソ連軍はパキスタンから撤退することとなった。
ここで忘れてはならないことは、テロの訓練を受けていたイスラム戦士の中の一人がウサマ・ビン・ラディンだったことだ。つまりウサマはアメリカが自ら養成したテロリストだったのだ。
その後、ホメイニ革命で反米に転じたイランを叩くために、今度は米国はサダム・フセインを使ってイラン・イラク戦争を勃発させた。イラク戦争を指揮したラムズフェルドが、レーガン政権の特使として、サダム・フセインと笑顔で握手をしている写真をみると、70年代においてはフセインはアメリカの盟友だったことがよくわかる。
しかし、イランの抑制の目的を遂げると、アメリカは今度は一転してイラク叩きに着手する。先の湾岸戦争がその始まりであった。さらに次なるイラク戦争では、かっての盟友フセインは一転してヒットラーにたとえられ、「ならず者」と名指しされることとなった
のだ。さぞかしフセインも驚いたことだろう。
アメリカのこうしたご都合主義的なやり方や、母国サウジアラビアを操るやり口に怒ったウサマは、イスラム戦士の一部を率いてアルカイダを結成、一挙に反米に転じ、「9・11同時テロ」を引き起こしたのである。
こうして見てみると、ウサマもフセインもソ連やイランと戦ってきた、いわばアメリカの盟友であったわけである。世界を揺るがしたあの9・11事件はそうした彼らを次々と裏切ってきた、アメリカの40年間にわたるご都合主義の因果応報だったのだ。
浜の真砂(まさご)とテロリスト
アルカイダやウサマの出現がこうした経緯によるものであったからといって、罪なき民間人を巻き込んだ残虐なテロ行為が許されるわけではない。多くの人々がテロとその実行者たちを憎んでいることは間違いない。しかし、現実には残虐なテロは無くなるどころかますます盛んになってきている。なぜだろうか?
先進国、後進国を問わず、社会の底辺で生きている人々の中には、テロリストたちの主張に共鳴し、その行為に拍手を送っている者が想像以上に多いからではないだろうか。武力や経済力を背景に我が物顔に振る舞う大国に対し苦々しく思っていいる人々は、テロリストを陰で支えるだけでなく、時には自らがテロリストの仲間に加わること
にもなるのだ。
今回のロンドンの自爆テロの実行者が、パキスタン系のイギリス人であったとされることが、そうした背景を如実に物語っている。伝えられるところでは、実行犯と思われる4人のイギリス人は犯罪歴もなく
MI5(情報局保安部)のリストにも入っていない
民間人だったという。
もはやテロリズムはアルカイダやイスラム原理主義者だけのものではなくなってきたようだ。
日常生活に不満を持ち、大国の論理に憤慨している人々の心の隙を狙って、彼らを洗脳し、自爆テロ犯に仕立てることはテロの首謀者たちにとってそれほど難しいことではなくなってきているのだろう。
それゆえ、政治や経済を通して世界を「力と金」で動かしている「強者」・「富める者」に対する不満や憤りがなくならない限り、自爆テロ実行犯が生まれる素地はすべての国、すべての都市に潜在していることになる。
まさに「浜の真砂は尽きるとも、世にテロリストの種は尽きまじ」である。

この記事を書き上げた直後に、世界的なテロの連鎖を暗示する事件が発生した。6日トルコ西部の保養地クシャダズで発生した自爆テロである。
4人が死亡、14人が重軽傷を負ったテロの自爆犯は女性ではないかと言われている。ロンドンのテロが18歳の少年だったことを考えると、もはや実行犯に「性」や「年齢」は関係なくなってきているようだ。
ホピの予言
こうした止めどもないテロの連鎖を見ていて思い出すのが、「ホピの予言」である。
千数百年の昔からホピ族に伝わる予言は、近未来に発生する大規模な戦争の端緒となるのは、病的世界にいらだった民衆の蜂起と、虐(しいた)げられたマイノリティー、すなわち「持たざる者」、貧困にあえぐ「弱者」の報復であると述べている。
「高い地位」の漁師と「低い地位」の漁師との間に、狩り合いが始まるだろう。高い地位にいる者たちは、おそらくテロリズムを通して、獣のように狩られるであろう。指導者たちも報復し狩り合い合戦が始まる。やがてこの状況は力を増して広く行き渡り、世界中どこでも統制が効かなくなるであろう。
(拙著『謎多き惑星地球』より)
世界の先進国、つまり高い地位の漁師たちの代表者が集まったサミットを狙ったテロは、まさに高い地位の漁師たちと低い地位の漁師との「狩り合い合戦」が本格的な始まったことを世界中に知らしめる事件だったのではなかろうか。
これから先、ブッシュ米大統領やブレア英首相が主張するように、富める者、力ある者がテロリストを力ずくで押さえ込もうとし続けるならば、悲惨で残虐なテロはますます頻度とその規模を増し、やがてそれは国々の争いから世界大戦へと進むことになるのではなかろうか。ホピの予言を知る私には
、そのように思えてならないのだ。