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氷河期の到来の恐怖

今世界の人々が一番恐れているのは、地球温暖化による海面上昇や異常気象が一段と進むことである。しかし、人々の心配をよそに、温暖化は想像以上の速さで進んでおり、国連の「気候変動における政府間パネル」(IPPC)で発表する予測データーも 、年を追う毎に悪化してきている。今後100年間で上昇する平均気温の最高値は、第3次予測では4.5度であったが、2月2日に発表された第4次予測では、6.4度へと上昇してきている。

現に、それを裏付ける現象が世界中で発生している。南極では棚氷が崩壊し、四国全体ほどの巨大な氷河が漂流し始めており、北極海では冬の厳冬期に東西250キロから500キロに及ぶ無氷海が出現している。

また、凍てつく島の代表格であるグリーンランドでも、島全体を覆っている氷床が年10〜12メートルのスピードで溶け出しており、代表的な氷河であるイルリサット氷河も異常な早さで後退を始めている。

1月30日、チューリッヒに本部がある「世界氷河モニタリングサービス」は、2000年〜2005年の氷河の厚さの年平均減少値が66センチで、これは80年代の3倍、90年代の1.6倍であると発表した。この数値は全地球的に氷河がいかに凄いスピードでやせ衰えているのかを示している。

また、アラスカでは永久凍土が溶けて建物が次々と倒壊する事態が発生しており、氷が張らない海では、ホッキョクグマが餌となるアザラシを襲うことが出来ず、その絶滅が危惧され始めている。
 

  

後退速度を速める氷河(北極)

                     

                                            絶滅が危惧されるホッキョクグマ(北極)

こうした温暖化現象が誰の目にも分かるようになってきたのは、20世紀末からであるが、今年の冬の暖かさには世界中の誰もが驚かされた。記録破りの異常な暖冬が世界中で発生したからである。

ニューヨークでは厳寒の1月に、市内の植物園の桜が狂い咲きし、セントラルパークではTシャツ姿でピクニックを楽しむ人の姿が見られた。またヨーロッパでも観測史上最高の暖かさがつづき、スペイン、フランスにまたがるピレネー山脈で毎年開催される犬ぞりレースが、雪不足のため中止となった。

ギリシャでは首都アテネで春に咲くアーモンドの花が開花スペイン南部でも、高温で雨が降らないため、春に産まれるはずの毛虫が大発生している。ロシアもまた状況は同じで、1月末の平年の気温が氷点下6度のサンクトペテロブルクで、8度を超す暖冬となった。

日本列島の異常な暖かさは既に皆さんが体感した通りである。札幌では雪のない正月を迎え、新潟ではスキー場の代わりにゴルフ場がにぎわったというから驚きである。各地の桜の開花は軒並み最速で、 私の地元の甲府でも、平年より8日も早く、3月21日に開花宣言が出された。

こうした温暖化現象はこれからさらに強まり、地球全体の平均気温が急激に上昇していくことは間違いなさそうである。

しかしながら、この暖冬が単に温室効果による単純な温暖化現象でないことは、その後の世界各地の異変を見ればよく分かる。1月中旬22度という初夏並の陽気が続いたニューヨークでは、2月に入ると一転して寒波と120センチを超す豪雪に見舞われ、五大湖周辺では氷点下41度を記録した。

マイナス41度といえば、まさに南極大陸並の気温であるから驚きだ。死者が出る状況に至ったのも頷けるというものだ。 この傾向は、4月に入っても続いており、マリナーズの試合が50センチの積雪で中止になったり、他の州では使者が出たりしている。

ヨーロッパもまた、1月末、暖冬から一転して寒波と積雪に見舞われ、交通渋滞や大規模な停電が発生している。日本でもまた、3月に入って冬に戻ったような寒波と台風並の強風・高波に襲われて、各地で被害が出たことは皆さんがご存じの通りである。

ここまで来ると、もはや「気候異変」と言うより「気候破壊」である。単純な温室効果による温暖化などと言っていられないことが実感できる。

こうした気候破壊現象を理解するには、映画「不都合な真実」の裏に隠された今一つの重大な「不都合な真実」を知る必要がある。それは、温暖化現象の後に訪れる氷河期の再来の可能性である。
 

「海洋大循環」の停滞がもたらす気候大激変

巨大な雹(ひょう)が東京に降り注ぎ通勤帰りの人々を襲う、一方、カリフォルニアでは複数の竜巻が都市部を襲い、ビル群が次々と崩壊していく。世界的な異常気象はやがてヨーロッパ、アジア、北米を寒冷化へ追い込み、高緯度地帯を一気に氷河期状態へと導く。

厳しい寒波に襲われた北米に住む何百万の人々は温暖なメキシコへ逃れる。北から南へ移民の逆転現象が発生したのだ。直ちにメキシコ政府は国境を封鎖する・・・・・これはハリウッド映画『デイ・アフター・トゥモロウ』の一場面である。

大規模な気候変動による氷河期の到来を描いたこの映画は、どうやらハリウッド得意のパニック映画として片づけてしまうわけにはいかないようである。というのは、急激な気候変動問題に真剣に取り組んでいる科学者の中には、本格的な氷河期は別にしても、相当な寒冷化、数世紀前の小氷河期を上回る寒冷化が起きる可能性は十分にあり得ると主張しているからである。

およそ800年前に発生した小氷河期には、バイキングがグリーンランドから撤退し、ロンドンのテムズ川は凍結して、アルプス山中には巨大な氷河が作られている。

ところで、樺太(サハリン)より北に位置するヨーロッパ諸国(ドイツ、イギリス、ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク)やカナダ、アラスカなどの高緯度地方でも、冬が異常な寒さにならずに、春から秋にかけて十分な量の農作物が収穫出来るのはなぜか? 

それは、太平洋や大西洋を循環している「海洋大循環」と呼ばれる大きな海の流れがあるからである。

   

                 地球の気候を決める「海洋大循環」(「日経サイエンス」より転写)
 

上の図で分かるように、強い太陽熱によって暖められた南太平洋の海水が、赤道を越えて北の海に流れ込み、欧州や北米の海外沿いを暖かくしている。また、この温暖流の上空で暖められた卓越風(高緯度地方を吹く季節風)は、ヨーロッパ大陸や北米大陸の内陸部を暖かくしているのだ。

その後、グリーンランドや北極海へと進んだ海水は寒気で冷やされ、高密度となって海底に沈んだあと、海底沿いに南に向かって流れていく。極北での沈み込みに引張ら れるように、さらにそこに南からの温かい海水が流れ込む。このように海洋大循環は高緯度の寒冷地に暖かさを運ぶベルト・コンベヤーの役目を果たしているのである。

ところが温暖化が進み、北極の氷やグリーンランドの氷床などが溶けて北太平洋に流れ込むと、これらの溶解水は淡水であるため、高濃度の塩分を含んだ南からの海水の濃度を薄め、その密度を下げることになる。

その結果、表層水は水温が下がっても海底に沈み込まなくなり、海洋大循環の速度が遅くなったり、停止したりする事態が生じることになるのだ。

ところで、本当にグリーンランドの氷床が溶けることによって、海洋大循環に変化を起こすほど海水の濃度を下げることが出来るのだろうか? 

気候予測の計算モデルに詳しい米国プリンストン大の真壁淑郎・上級研究員は、「0.5グラム分の濃度低下で熱塩循環が半減し、0.1グラムでも影響が出る可能性はある」と述べている。

グリーンランドは日本の約6倍の面積を持つ島である。その上に2800m〜3000mの厚さの氷の層(氷床)が乗っており、その体積は6000〜7000兆立法メートルに達する。この数値を見れば、熱塩循環を止めるに十分な量であることがわかる。

現に、近年、熱帯や亜熱帯地方の海水の表層水の塩分が非常に高くなっている一方、北大西洋の表層水が急速に真水化していることが観測記録から明らかとなってきている。

こうして海水が沈み込まなくなると、海面は薄氷が張った状態になる。そうなると、沿岸部だけでなく、もはや暖かな海水に暖められないままの冷たい空気を東に運 ぶ卓越風によって、欧州や北米、カナダは一気に寒冷化が進むことになる。その結果、北欧や北米の冬は一段と厳しくなり、農業にも深刻な影響が出てくる。(下の図を参照)

 (「日系サイエンス」より転載)
                   
                           
                                                         コンベアーがONの時

                                                                  ↓

     

                            コンベアがOFFの時


実は、寒冷化の被害はこれらの高緯度地方だけではすまされないのだ。季節風(モンスーン)によって適度な雨の恵みを受け、作物をはぐくんできたアフリカや東アジアでも 、致命的な干ばつに襲われる事態が発生することになる。冷たくなった北太平洋はアフリカの上空やアジアに入る夏の暑い空気を減らし、季節風を弱めることになるからである。

歴史をさかのぼれば、その様子が垣間見えてくる。多くの湖が点在し緑が広がったアフリカのサハラ地方が、焼けつくような砂漠に変身したのは、約5000年前に突然起きた干ばつによるものであり、メキシコの古代マヤ文明が滅亡したのも約 1100年前に200年ほど続いた乾期が原因であった。

一方、乾燥化に至らない地方でも、田畑を潤す適度な雨が何度も降るといった理想的なパターンが崩れ、洪水をもたらすような「豪雨」と「日照り」が繰り返されるようになってくる。こうなると、水循環の微妙なバランスの上にある世界中の穀倉地帯は、大打撃を受けることは間違いない。

                                   次回に続く

 

 

 

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