世界をあっと言わせたトルコの造反
2日の世界のメディアは、一斉にトルコ国会でのアメリカ軍の駐留反対の決議を伝えた。
欧州などで攻撃反対の声が高まる中で、国際世論の支持を得たいアメリカにとって、この決定は衝撃的な出来事であったに違いない。なぜなら、ギュル首相率いるトルコ与党は議会の三分の二を占めており、米軍駐留承認の案件が否決されるとはよもやの事態だったからである。
トルコ政府は駐留期間の短縮や戦闘機や戦闘員の規模の縮小などを盛り込んだ修正案を提示し、再度承認をえようとする考えのようだ。その結果、米軍の駐留が認められることになる可能性は残っている。しかし、今回の否決の波紋は想像以上に大きく、たとえ駐留可となっても、世界の人々からの対アメリカ批判の目が一段と強まることになるのは間違いない。
トルコ与党の100人近い議員が、出席をボイコットして反対の意思表示をしたは背景には、国民の大半が軍事協力に反対していたことがあるが、一番の要因は、アメリカの「全てを金で解決しようとする」傲慢な姿勢に対する反感があったことは、まぎれもない事実のようだ。
十数年来続くアメリカの貿易赤字は一向に改善されることなく年々増え続け、とうとう昨年度は4300億ドル(52兆円)となり、GDP比で4%台に乗ってしまった。こんな状態が他の国で起きたら、ものの数年で国家破綻、外国から貿易の相手にされなくなってしまう。
しかし、アメリカではこんな状態が十数年も年以上も続いているのである。それでも尚、アメリカが世界に覇を唱えていられるのは、日本を筆頭に世界中のマネーが、アメリカとUSドルの強さを信じて、ウオール街に流れ込んでいるからである。
その上、しばらく小休止していた財政赤字も再び発生し始め、2003年度の赤字は、対イラク戦の戦費を加えると数十兆円にふくらむと言われている。そのような国家財政火の車のアメリカから3兆円を超す大金を引き出そうとするトルコもトルコだが、それまでしてイラクを手の内に入れようとするには、思わず舌なめずりしたくなるような美味しい話があるからに他ならない。
イラクの民主化や大量破壊兵器の放棄が、アメリカにとってそんなに美味しい話でないことは事実だ。土台、今のイラクには近隣の諸国を恐怖に陥れるほどの大量破壊兵器などは、存在していそうもないことは、飛行距離がわずか30キロメートル延びただけのアッサムード2ミサイルの解体を、唯一の手柄話にしている査察団の姿を見れば自ずと見えてくる。(ただ幾ばくかの生物兵器は保持されており、アメリカ軍に対して使用される可能性は残されているかもしれない)
それにしても、アッサムード2の廃棄を義務づけたブリクス委員長も酷なことをしているものだ。大人と子供ほどもある戦力の差があるイラクの軍事力に対して、数少ない対抗手段であるミサイルを全廃させた後に、もしも、アメリカが戦争を仕掛けたら、イラクは何をもって対抗せよというのだろうか?
射程距離オーバーのミサイルを廃棄させるのは、当然と言えば当然だが、それには、廃棄途中でのアメリカの攻撃だけは体を張っても阻止するだけに気構えを見せねばなるまい。それが出来ないようでは、査察団団長としての資質を問われても仕方がないように思われるが、いかがなものであろうか。
そう思っていた矢先、「米攻撃ならミサイル廃棄の中止も」の発言がサアディ大統領顧問からなされた。「さもあらん」という感じである。サアディ氏は記者会見で、「今月の早い段階で米国が合法的な道をたどらなければ、どうして我々がミサイル廃棄を続ける理由があるだろうか」と述べているが、この発言は「泥棒にも3分の道理」として、一方的に無視するわけにはいきそうもないように思われる。勿論、アメリカにとってこの程度のミサイルの100基や120基など何ほどのものでもないであろうが。
NHK特集が伝えたこと
1日夜9時からの[NHK特集]をご覧になられただろうか。
80年代以降のアメリカとイラクの蜜月と離反の歴史が放映されたが、その内容は、先に私が「近づくイラク戦争@」で述べた通りであった。登場した元国連大量破壊兵器査察官のスコット・リッター氏の発言は、アメリカが査察の名の下に、CIAによるスパイ工作を企んでいる実体にまで言及していた。
これまで、対イラク戦争を漠然としか考えていなかった平和ぼけの日本人にも、アメリカがなにゆえに執拗にイラク攻撃をしたがっているのか、また、フランスやソ連、中国がそれに異を唱えているかの真相の一端を垣間見ることが出来たに違いない。
1時間15分に渡る放映を見終えた人々には、イラクに限らず、世界中の多くの中小の国々や発展途上国が、アメリカをはじめとする大国のご都合主義に振り回されてきた歴史がよくわかったことであろう。
「近づくイラク戦争@」で、私が詳述しなかったイラクの細菌兵器の開発についての驚くべき真相が放映されたので、テレビを見なかった人のために、そのポイントを述べておくことにしよう。
世界中のあらゆる国や民間会社が守らねばならないことの一つに、軍事用に転用される可能性のある技術や製品を輸出してはならない規則がある。かって我が国の某総合電機メーカーがソ連圏に輸出した製品が、原子力潜水艦のソナー(水中音響探知機)として転用されたとされ、アメリカで商品のボイコット運動が起きたことを記憶されている人も多いだろう。
ところが、戦争の脅威を拡散したと、声高らかに糾弾の先頭に立ったアメリカ自身が、イラン・イラク戦争(1980−88年)の最中に、なんと国家ぐるみで、公然とこの法を犯していたことを、レーガン時代の国務次官補だったリチーマ・マーフィー氏が認めているのだ。これにはさすがの私も、開いた口がふさがらない思いであった。
マーフィー氏によると、「デュアル・ユース」と呼ばれる「二重の使用目的」を持った製品や技術も、当時、イラクが軍事目的でないと主張さえすれば、あらゆるものが輸出可能だったと言うのだ。つまり、軍事目的への転用が十分に可能な如何なる技術も製品も、イラクに対しては、公然と政府公認のもとに輸出されていたというわけである。
しかも驚くべきことに、アメリカ上院委員会の調査によると、「デュアル・ユース」の中には、レッペル予防センターから送られた「ポツリヌ菌の毒素」や別の研究機関から輸出された「炭疽菌」が含まれていたと言うのだ。インタビューの中で先の国務次官補は、民間の研究機関に送られたこれらの細菌が、生物兵器の開発に利用され、それがイランやクルト人に対して使われることとなったのは間違いないと公然と述べている。
これでは、ブッシュやラムズフェルドがわめいている「VXガス」た「炭疽菌」などの大量破壊兵器とやらを、イラクに保持させた元凶は他ならぬアメリカ自身だったことを自ら公言しているようなものではないか。
さらに驚かされるのは、当時、アメリカがとったこのような政策はイランの強大化が彼らにとって脅威であったことを考慮すると、決して罪の意識を感じることではなかったと、堂々と主張している点である。もはやご都合主義もここまで来れば、何をか言わんやである。
彼らの論理を聞いていると、アメリカ自身にとって「是」とされることであるなら、それがいかに非人道的なことであろうが、他国に迷惑を与えることであろうが、それは「良し」とするのだ言うことになってくる。これでは、広島や長崎の罪のない数十万の民間人を死に追いやった原爆投下も、謝罪の対象にならないことが頷けるというものだ。今や世界は、何とも恐ろしい国がを盟主になろうとしているのだ!
いずれにしろ、間もなく最新鋭の殺人兵器がイラクの無辜(むこ)の人々の頭上に降り注がれることは必定だ。そして、この戦争が人類の近未来にとって重大なインパクトを与えることになるのは間違いない。「大いなる都バグダットが滅びるとき」、人類はかって経験したことのない一大艱難に遭遇するであろうと、旧約聖書のヨハネの黙示録は告げているからである。
また一方、もしも、国連の承認を得られぬまま、アメリカが単独でイラク攻撃に踏み切るような事態になったとしたら、それはまさに、「ホピの預言」が伝える世界の覇者・アメリカの崩壊の序奏を意味することにもなるであろう。拙著の『謎多き惑星地球』を読まれた読者には、その意味が理解できるはずである。
今回の対イラク戦争勃発は、歴史上の如何なる戦争よりもその意味するところが大きいことを、忘れてはならない。世界中の人々がこぞって今回の戦争に反対の声をあげ始めているのは、決して偶然ではない。バグダットが「火の海」と化した時、その後に続く戦慄の情景を人々は本能的に感じているからに他ならないのだ。