近づくイラク戦争

 

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近づくイラク戦争

 最近のマスコミは連日のように、アメリカによるイラク攻撃を取り上げている。

 イラクが戦渦にまみえる事態は避け難い状況であることは誰の目から見ても明らかとなってきた。3月10日前後には、バグダットへ狂気のミサイルが撃ち込まれるニュースが世界中を駆け巡ることになるであろう。

 それにしても、最近のアメリカの横暴さは目に余る。彼らの振る舞いを見ていると、世界は全て彼らの属国となり、臣下となるべきだと考えているのではないかと思いたくなってくる。アメリカに都合が悪い政権が誕生すると、ありとあらゆる策略を巡らし、内紛を起こし戦争へと導く。

このようにして、第二次世界大戦後、アメリカが直接関わった戦争は、主だっただけでも十指に余る。「世界の警察国家」たらん自負心は結構だが、平和な家庭に争いの種をまき散らし、かってに銃を乱射して侵入する警察など誰も望んでいない。

 朝鮮半島(1950〜53)、ドミニカ共和国(1965)、ベトナム(1964〜73)、レバノン(1982〜83)、グレナダ(1983)、リビア(1986)、パナマ(1989)、イラク(1991)、コソボ(1999)、アフガニスタン(2000)・・・・まさにアメリカが「中毒性戦争大好き症候群」に陥っているのがよくわかる。

 中でも、湾岸戦争、コソボ戦争、アフガン戦争は我々の記憶になまなましい。因みに、アメリカの軍事費の連邦予算にしめる割合は52%となっており、およそ3500億ドル(42兆円)というとてつもない数字である。因みに、アメリカ一国の軍事費は現在、2位以下の15カ国の総額より大きく、全世界の軍事費の36%となっている。

 この巨費をもって最新の戦闘機、戦車、ミサイル、新型爆弾が次々と開発、製造され、それらは新しい戦場で、その成果を試されてきたわけである。朝鮮半島も、ドミニカもベトナムもそこには、アメリカほど白人やビルの数は多くはないが、彼らとまったく同じ人間が住んでいるのだ。断じてそこは新型兵器の実験場ではないのだ!

 

世界各国の軍事費 (単位:ドル) 

1位 アメリカ:2946億 、2位 ロシア:588億 、3位 日本:444億 、  4位:中国411億 、 5位 フランス:342億、  6位 イギリス:338億、  7位 ドイツ:282億 、  8位 イタリア:205億 、 9位 サウジアラビア:183億、  10位 ブラジル:175億、  12位 インド:144億  13位 韓国:125億 、  15位 イスラエル:94億、   16位 カナダ: 75億 、  17位 イラン:73億 、  19位 オーストラリア:70億、   20位 パキスタン:36億      (英国国際戦略研究所資料)

 

 ベトナムで枯れ葉作戦として使われた生物兵器は、ベトナム中に大量の奇形児を産み出すところとなった。手術を受けに来日した双頭児の衝撃的な姿は我々の記憶に未だ鮮明に残っている。

 ベトナム戦争がいかに非人道的なものであったかは、ベトナム戦争の帰還兵のうち50万人を超す兵士が、帰国後、戦争の恐ろしい記憶に悩まされ、トラウマ的ストレスに見舞われた結果、自殺する人が後を絶たず、その数は戦地で死亡した兵士の数より多いことが如実に物語っている。

  また、湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾は戦車などの分厚い装甲をバターのように切り裂くことが出来るほどの威力を持っているが、使用された800トンの劣化ウラン(ウラン238)のため、戦後、イラク国民と多国籍兵士の間に放射性被害が拡がり、ガン、白血病、肝臓障害、腫瘍、奇形児出産などの症状に苦しむ人々が激増しており、第二のベトナム症候郡が発生している。

 マスコミは箝口令が引かれたように黙して語らぬが、800トンの劣化ウランは、広島に落とされた原爆の数万倍の放射能に匹敵すると言われている。さらに恐ろしいことに、劣化ウランの半減期は45億年だと言うから、それらが完全に消える去るのには宇宙の創生期にさかのぼるほどの時間がかることになる。

そのためイラクでは、放射能に敏感な子供達が他の保健衛生条件の悪化と相まって、50万人もの死亡が報告されているが、これをもって、長年、核軍縮に取り組んできたアメリカの核政策研究所のヘレン・カルディコット女史は、「湾岸戦争は核戦争だったと」述べている。

 さらに先のアフガンで使われたスマート爆弾やレーザー誘導爆弾などの新型爆弾は10キロ四方の生き物を瞬時にして焼き殺してしまうという、驚異的な殺傷力を持った核爆弾一歩手前の凶器であった。アフガンの地に炸裂したこれらの爆弾によって、10万人を超す罪なき民衆が犠牲になっているのだ。

 それでも尚、アメリカは戦争に飽きることはなさそうだ。と言うより、益々戦争を愛し、人殺しを愛し、父無し子や後遺症に苦しむ人々を生むことを愛し続けようとしている。勿論、アメリカ国民すべてがそうというわけではない。しかし、政府の中枢にブッシュや、チェイニー、ラムズフェルドのような好戦的な政治家がいる限り、その状況は決して変わることはなさそうだ。

 

アメリカの主張するイラク攻撃の正当性は真実か?

アメリカ政府を始め、イラク攻撃に前向きな人々の主張するイラク攻撃の根拠は次の数点に絞られる。

 @ 核兵器を製造、貯蔵している。
 A 化学兵器、生物兵器を製造、貯蔵している。
 B アメリカまで届く運搬手段を保持している。
 C アルカイダとの関わりが認められる。

 先の湾岸戦争の終結時に国連と交わした条約により、イラクは1991年以降大量破壊兵器(核兵器、化学、生物兵器、射程距離150キロ以上の長距離弾道弾)を保持することが出来なくなっている。従ってアメリカが主張するように、もしもイラクが核兵器や生物、化学兵器を保持し、アメリカまで届くミサイルを保持しているとしたら、国連が定めた軍縮義務に対する重大な違反となることは明らかである。

 現在、ブリクス委員長が率いる国連監視検証査察委員会がそれらの疑惑について必死に調査をしているが、幾つかの疑問点はあるものの、確たる証拠は発見できずにいる。2月5日、パウエル国務長官は国連の安全保障理事会でアメリカが秘蔵する衛星写真や会話の録音記録を開示したが、それらは万人を納得させるほどの確たる証拠ではなかった。

 それは、あくまでも状況証拠に過ぎず、そうかもしれないし、そうでないかもしれないといった程度のものに過ぎなかった。それが何よりの証拠には、国務長官の発言以降も、アメリカ国内の反響を除けば、イラク攻撃を支持する人の意見は少数のままで、むしろ反戦デモに参加する人々の方が多くなっているように感じられる。

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2月9日のインドネシアにおける
大規模なイラク反戦でも(ロイター電)

ドイツにおける反戦デモ(ロイター電)

 しばらくの間、国連の検視検証査察団はさらに調査を続けることになるのだろうが、アメリカが見切り発車をしてしまったら全ておしまいである。我々は疑惑に対する白黒をつけれないまま、バグダットに降り注ぐミサイル爆撃の悪夢を再び見せつけられることになってしまう。

 しかし、有り難いことに、イラクの疑惑に対して明瞭な回答をもつ人間が存在いた。元国連大量破壊兵器査察官、スコット・リッターである。彼は1991年から98年まで7年間、国連大量兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)の一員としてイラクの大量破壊兵器の調査と発見された兵器、工場の破棄に携わってきた人間である。彼こそは現在のイラクの政治と潜在的兵力について、世界一詳しい状況を語ることができる人物の一人である。

 その彼が、最近一冊の著書を出版した。スコット・リッターの証言『イラク戦争』である。同著は現在11カ国で翻訳され、ベストセラーとなりつつあるが、この本の中で、彼はアメリカの主張するイラク攻撃の正当性について、明確に答を出している、「NO!」と。

 
スコット・リッターの証言

 経歴を見ると、彼は1988年から90年まで旧ソ連の軍縮査察にたずさわり、90年の湾岸戦争では米海兵隊員として、イラクとサウジアラビアでミサイルの探知などの特殊部隊の任務にたずさわっている。そういった意味では、彼は人一倍アメリカに身を捧げてきた愛国者と言うことができる人物である。

 また一方、彼は2000年の大統領選ではブッシュ陣営を応援したバリバリの共和党員でもある。そんな彼の「イラク攻撃には正当性がない!」とする発言は、実に衝撃的であった。彼はインタビューに答えて、イラクは1991年4月に採択された国連687号決議に対して、重大な違反を犯しておらず、アメリカが戦争を仕掛ける正当性は存在しないと、はっきり述べている。

 それでは、先に掲げたイラクに対する4つの疑惑に対する、スコット・リッター証言のポイントを紹介することにしよう。

以下に掲載するリッターの証言は、翻訳者の星川淳氏のご承諾を得て『イラク戦争』ーブッシュ政権が隠したい事実ー(合同出版刊)より抜粋させて頂いたものである

@ 核兵器疑惑について

 1998年、国連の査察プログラムが中断され、私がイラクを離れた時点では、核兵器のインフラと施設は100パーセント廃棄されていました。それについて議論の余地はありません。装置や施設はすべて廃棄され、核兵器の設計施設も破壊しました。製造装置もその在りかをつきとめ、廃棄しました。また、イラクがウラニウムやプルトニウムを濃縮しようとしても、陸上車両と空からそれを監視する監視網も配備しました。この監視網に引っかかってきた濃縮施設は何もありませんでした。イラクが核兵器製造に必要とする工業インフラは完全に廃棄されたと断言できます。

 しかし、物理的インフラは撤廃されたものの、イラクには今なお、核兵器の開発計画とそのためのインフラがあった時期と同じ組織編成で、知識と経験をもつ核科学者が何千人も存在しております。、現在、それらの科学者たちは適正な任務に従事していますので、その仕事白体、非合法ではありませんが、イラクは科学者たちを引き続き、核兵器開発計画を進めるのに都合の良い形で配置しているといってよいでしょう。

 科学者たちは別々な部門に別々な課題ごとに振り分けられ、特殊細分化された形で編成さています。ですから長い目で見れば、イラクは核兵器開発計画を再開ないし復旧しようとしているのではないかという懸念が出てきます。しかし、この懸念は現実とよく照らし合わせなければなりません。

 ・・・・・イラクがふたたび核兵器を保有するためには、一からウラニウムやプルトニウムの濃縮作業を行ない、さらに兵器化する能力を再建しなければなりません。それには何百億ドルという資金が必要です。また、核兵器は地下室や洞窟でつくれるようなものではありません。それ相応の工業インフラが必要であり、それを支える大量の電力と、一般市場では手に入らないような特殊技術が必要なのです。

 従ってチェイニー副大統領は、イラクは2年以内に核爆弾を製造できると明言しましたが、彼が我々が知らない秘密情報でもつかんでいない限り、まったくのたわごにすぎません。チェイニー副大統領が何かを知っているとは思えません。

 なぜなら、彼を含めブツシュ政権の役人たちを問い詰めても、私の元上司「第二代の査察団長」だったオーストラリア人外交官リチャード・バトラーか、サダム・フセインの爆弾製造係だったと吹聴している亡命イラク人、ハディル・ハムザの証言を引用するだけだからです。この二人はいずれも憶測以上に白説を裏づける材料をもつていません。チェイニー副大統領が主張しづづけているイラクの核兵器開発能力は、根拠のない憶測にすぎないのです。

 イラクの核兵器開発の能力は憶測や推測で判断するような問題ではありません。1991年から98年までに実施されたイラクの軍備管理に関する国連の記録に照らせばなおさらです。この記録はしかり文書化され、議論の余地のないものです。われわれはイラクの核開発計画を廃棄しました。もし、イラクがそれを復旧するとなると、西側の諜報部門にすぐばれてしまうような活動を行なわなければならないのです。


A
化学兵器に対する疑惑

 イラクはサリン、タブン、VXの三種類の神経物質を製造していました。イラクと戦争をしたがつている人びとは、サリンとタブンの詰まった二万発の弾頭がアメリカ人に向けて使用されかねないと言います。しかし、この主張は事実の裏づけがありません。サリンとタブンは貯蔵寿命が五年間です。もし、イラクがそれだけ大量の化学兵器を査察官の目から隠しおおせたとしても、いま貯蔵されているものは無用無害の物質に変質してしまっています。

 化学兵器はムサンナ国立施設という巨大な化学工場で製造されましたが、この工場は湾岸戦争中に爆撃され、戦後、査察団が入って設備の廃棄を完了しました。これによってイラクはサリンとタブンの製造基盤を失ったわけです。

 ・・・・・われわれは何年間ものあいだ焼却施設をフル稼動させ、毎日何トンというサリンとタブンを焼却したのです。現場に出かけていって、サリンやタブンが詰まった砲弾や、ミサイルや弾頭を吹き飛ばすこともしました。スカッド・ミサイルの弾頭からも抜き出しました。サリンとタブンは確実にその存在をつきとめ、廃棄したのです。

  しかし、イラクがその一部を隠した可能性はありませんか?

 確かに、その可能性は大きいでしょう。問題は、彼らが何を隠したにせよそれらはすべてムサンナ国立施設で製造されたものだという点です。つまり、われわれが施設を吹き飛ばして以来、イラクは新しい化学物質を製造する能力をもたないのです。

 そして、サリンとタブンは5年間で変質し、無用のヘドロになってしまったはずです。もう世界が心配するような毒性をもつ危険な化学兵器ではありません。イラクが化学兵器を保有しているという話は、すべて時効になっています。・・・・・・(また、)VXの研究開発プラントについても破壊され、前駆物質は廃棄され、兵器も廃棄され、工場も破壊されていることは明らかです。


生物兵器疑惑

 生物兵器については、製造しようとしていただけではなく、実際に製造したことが明らかになっています。液体炭疽菌と同じく液体のボツリヌス菌も相当量製造しました。イラクはこの二種類の兵器化に成功し、弾頭や砲弾に装填していました。

 彼らはこの能力について、しばらくウソをついていました。1995年になってようやくそのウソを認めたので、われわれは製造工場と装置の破壊に着手しました。ただ、通説とは裏腹に、イラクが天然痘とかエボラ熱など、いまマスコミが盛んに騒いでいるような恐怖兵器に手を染めていたという証拠は皆無です。

・・・・・(先述したように)イラクは液体炭疽菌の製造能力をもっていました。それについては議論の余地がありません。(しかし、)液体炭疽菌は理想的な条件下でも3年で発芽し、効果を失います。ですから、もしかりにイラクがわれわれにウソをついて炭疽菌を温存したとしても、生物兵器としては役立たないでしょう。

 イラクが炭疽菌を隠した証拠はなく、一部の査察官がそう推測しているにすぎません。炭疽菌もボツリヌス菌も無害化しているとすれば、いまのイラクに生物兵器はないということになります。


B 弾道弾ミサイル疑惑

 イラクは射程距離150キロメートルを越える弾道ミサイルの保有を禁じられていますが、それ以下のミサイルシステムの保有は認められています。イラクが盛んに開発を進めているのは二つ。一つは個体ロケットのエンジン設計、もう一つは液体燃料推進のアルサムード・ミサイルです。

 アルサムード・ミサイルの推進機構は、燃料が供給されるかぎり燃焼しつづけるエンジンで、射程距離は燃料タンクの容量で決まります。イラクが開発していた推進システムは、燃料タンクを長くするか、複数のミサイルを束ねて射程距離を仲ばすというような改造が簡単にできました。

 われわれはこの計画に目を光らせて詳細な調査を行ないましたが、イラク国内でのロケット製造能力に決定的な限界があることがわかりました。湾岸戦争以前、イラクは精密機械で名高いドイツから多くの技術と部品を仕入れていました。戦後、イラクはそのコピーを試みましたが、ほとんどうまくいきませんでした。われわれのチームにはロケット科学者がたくさんいたので、ロケットの組み立て工程を監視すると、どこにミスがあるかが容易に見抜けたのです。

 イラク側は査察協定にしたがって設計図を開示する義務がありました。もちろん、こちらから親切にミスを教えてやったりはしませんでしたが、イラクのロケット開発計画に携わるスタッフは、知性とやる気にはあふれているものの、みんなアマチュアで、その限界を超えられないことがすぐにわかりました。

 彼らが設計したロケットはスピンや横転がひどく、あらぬ方向に飛んだり、爆発したりする手に負えない代物だと値踏みされました。もちろん、彼らもいずれは技術を完成させられるはずです。しかし、1998年の時点で、その先、経済制裁が解除され必要な技術が入手できるようになると仮定しても、完成まであと5年はかかるというのが精一杯好意的な評価でした。

 イラクが多段式ロケットを所有しているという話も聞きますが、イラクは多段式ロケットの製造技術など持っていません。1989年、まだその技術を外国から自由に導入することが出来た時代に、一旦開発を試みたことがありますが、空中爆発を起こしてしまいました。

 多弾頭ロケットを所有しているという話も聞きます。しかしこれについてもイラクはその開発を試みまたことがありますが、失敗しています。とにかく断言できるのは、イラクには長距離弾道ミサイルを飛ばす技術がないこと。短距離弾道ミサイルの技術さえありません。

 飛ばせるようになろうと努力はしているものの、まだ未完成です。転用可能な技術は持っていますから、ミサイル開発計画には目を光らせておくべきだと思いますが、イラクが突然、長距離ミサイルをとばせるようになるなどという考えはバカげています。ロケット開発にはたくさんのテストが必要で、すべての発射実験は屋外でしかできません。探知されずにすむ話ではないのです。


C アルカイダ・コネクション疑惑

 これほどバカげた話はありません。サダムは世俗主義の独裁者です。彼は過去30年間、イスラム原理主義に対して宣戦布告し、その壊滅に励んできました。イランとの戦争も、イスラム原理主義叩きの一面があったのです。

 イラクは現在、国内法でワッハーブ主義(18世紀以来サウジアラビアの国教で、イスラム法の厳格な適用を求める)を含むあらゆるイスラム教の強制的布教を厳禁し、死罪で臨んでいます。とりわけワッハーブ派を目の仇にしていますが、オサマ・ビンラディンがワッハーブ主義の信奉者であることは周知の事実です。オサマ・ビンラディンのほうも、ずっとサダム.フセインを背教者と呼んで宿敵視してきました。イスラムで背教者とは、抹殺すべき人間という意味です。

それでも、ビンラディンはイラクヘの経済制裁を聖戦の大義名分に掲げていますね

 それは、アメリカの経済制裁がサダム・フセインを標的にせず、イラクの民間人を標的にしているからです。これまでのところ、オサマ・ビンラディンとサダム・フセインを結ぶつながりは皆無です。チェコのプラハでアルカイダのメンバーがイラク側と接触したという有名な話も眉唾ものです。現在、諜報機関はそんな密会はありえなかったはずだと見ています。その時期・モハメド・アタアルカイダの一員で9月11日の首謀者とされるエジプト人)はフロリダにいたという強いアリバイがあるからです。

 

イラク攻撃に正当性はない!

 以上が、スコット・リッターが命がけで明らかにした、イラク問題に対する真摯な証言である。それを読む限り、いまアメリカにはイラクを叩く根拠がないことは明白である。

 彼の証言については、様々な意見があるだろうが、イラクで7年間大量破壊兵器を追いかけ、アメリカのみならず中東地域及び世界の安全と軍事的安全保障に関わってきた彼の経歴を考えると、大きく的をはずれたものでないことは間違いない。

 彼の冷静な分析と警鐘は、アメリカの垂れ流す戦争プロパガンダへの解毒剤として、何にも代え難い価値を持つものというのが、彼の証言を読んだ、私の率直な感想であるが、いかがであろうか。

 《  ミサイル問題 》

イラクのミサイル製造
施設

 14日の各紙は、国連調査団が、国連決議に違反した射程距離をオーバーのミサイルの開発について、安全保障理事会に報告すると伝えている。アメリカと英国はそれ見たかとばかりに「重大な違反」があったではないかと、押っ取り刀で新たな交戦決議案を上程しようとしている。

 しかし、紙面をよく読むと、スコット・リッターが証言しているアルサムード・ミサイルの射程距離が、制限距離をわずか30キロメートルオーバーしているだけの話である。だいたい150キロメートルの根拠は、イラク国境からイスラエルまでの距離(およそ300キロメートル)の半分を前提にしたものと言われている。

 だとすると、この程度の距離オーバーなど、目くじらを立てるほどのことではないのは明らかだ。案の定、ロシアはさっそくに、「重大な違反」に該当するものではないとして、あわてずに査察を継続すべきだとコメントを出している。それよりも、イギリスのタイム誌が伝える「パウエル演説はパクリだった!」を読むと、まさに噴飯ものである。→http://www.01.246.ne.jp/~aoyama/mi6-2003.2.htm 

  交戦症候群のアメリカにとってはこの程度のものでも、ゆだれが出るほど美味しい話に思えるのだろうが、アメリカ政府はイラクから自国までの距離が制限距離の100倍もあることを、すっかり忘れてしまっているようだ。こんなことで目くじらたてるのなら、三段式弾道ミサイル「テポド2ン」を保有する北朝鮮は、明日にも爆撃しなければならなくなってくる。

  ところがこちらは、あくまで話し合いで解決をと、まったく別人のようなことを言っている。ご都合主義もここまで来れば立派なものだ。失語症ならぬ失読症(長文の文章が読めない症状)のブッシュには、支離滅裂症という新たな病状を加えねばならないようだ。

 
今のイラクに西欧式民主主義は求められない

 最後に、イラクに戦争をもたらそうとする人々が、よく「イラクに民主主義をもたらすのが、戦争の目的だ」と主張しているが、それについてどう考えるかという質問についても、彼は実に的確に答えている。

 ドナルド・ラムズフェルド(国防長官)その他の連中がイラクの民主主義を語るのは茶番です・欧米型の民主主義は多数決にもとづいていますが、もしイラクの民主化を多数決で進めるとしたら、結果はラムズフェルドたちが望むものにはならない公算が高いからです。

 第一に、イラクの人口の60パーセントは、宗教的にイランとつながりの深いシーア派イスラム教徒です。そして、イランが反米イスラム原理主義の温床であることはいうまでもありません。イラクは世界第二の石油埋蔵量を擁する国です。シーア派が実権を握る形でのイラクの民主化は、イラン・イラクという二つの大産油国が宗教的に結びつくことを意味しますから、それを望む人はあまりいないでしよう。中東地域でもそれを支持する声は少ないはずです。シーア派の支配を望まないのであれば、われわれは本当のところイラクの民主化など求めていないということになります。

 人口比の第二位は23パーセントを占めるクルド人です。これも実際、クルド独立を望まないことにかけては、アメリカはトルコに引けを取りません。トルコはクルディスタン独立を阻止するために、長く血なまぐさい戦争をっづけてきました。民主化によってイラク国内のこの23パーセントが台頭することは、アメリカの利益にならないでしよう。

 こうしてみると、われわれの本当の関心は残りの17パーセントであるスンニ派イスラム教徒にあるわけです。サダム・フセインはスンニ派です。イラクの政治を支配してきたのは、ずっとスンニ派諸部族でした。彼らが軍を支配し、統治階級を独占してきたのです。しかし、そのスンニ派内部に関しても民主主義はなじみません。                                             

 
STOP THE 「イラク攻撃」

 彼の証言を読むと、アメリカの主張する「イラクに民主主義を!」のスローガンが、いかに非現実的で、非論理的な主張であるかが分かる。フセインがシーハ派教徒やクルド人に対し、粛正と弾圧を重ねてきたことは多分本当であろう。しかし、それはあくまでもイラク国民の問題であり、彼ら自身が解決すべき事柄のはずである。「他国が武力を持って、それも数十万の罪なき民を死に追いやってまで、介入すべきことでない」というのが、私の考えである。

 そもそも、サダム・フセインを今日のような独裁者にしたのは誰あろう、アメリカ自身ではなかっただろうか!そんなことは中東の歴史をわずか二十年もさかのぼればすぐに分かることである。

 イラクの隣国イランでは、1980年代、反米ナショナリズムとイスラム原理主義を掲げる民衆運動によって、イランの親米派シャーが退任に追い込まれ、その後をアヤトラ・ホメイニが権力の座に着いた。こうしてイランが旧ソ連との結びつきを強めると、親ソ「イラン」の強大化を恐れたアメリカは、従来のフセイン政権に対する敵対姿勢を180度転換し、軍事面に関する積極的な支援を開始することになる。時のアメリカ大統領はロナルド・レーガンであった。

 1988年、フセインはハラブシャ地方のクルド人に対し、化学兵器を使用する。アメリカ政府は表面上激しい非難を浴びせながらも、裏では、ソ連の支援するイランの強大化を恐れるあまり、フセイン政権への軍事的、経済的支援を拡大しているのだ。つまり、この時期に、アメリカは独裁者フセイン誕生のお膳立てをしていたというわけけである。

 翌1989年、アメリカはフセインをそそのかし、イランを叩くためにイラン・イラク戦争を勃発させる。10年間の長きに渡って続く戦争中、レーガン政権はイラクへ強力な武器を供与し続け、フセインの政権を盤石のものとすることに手をかし続けることになる。

 アメリカの後ろ盾を得たフセインは戦争の最終局面で、イラン兵に対し化学兵器を使う事態に至る。しかしアメリカは、その時もまたイラクのおぞましい行為を黙認したまま、対イラク軍事支援を継続している。

 今、ブッシュ大統領がイラクを「悪の枢軸」と読んで攻撃し、フセインを追放しなければならないと主張している最大の根拠が、実は、この時のクルト人とイラン人に対する化学兵器の使用というのだから恐れ入る。

 これらの事実を考え合わせると、そもそもアメリカが「ヒットラー」と名指しする悪玉フセインこそ、アメリカ自身が手塩にかけて育ててきた不肖の息子だったことが分かる。サダム・フセインを与太者呼ばわりし、攻撃を仕掛ける以前に、アメリカこそ、育ての親として我が身の不徳をわび、世間に頭を下げるのが筋道というものではなかろうか。

 イラク攻撃に費やす数兆円の戦費を、もしも今、アフガンやパレスティナの復興に向け、家を失い家族を亡くした人々の救援に向けたとしたら、世界のイスラム教徒はこぞってアメリカ讃歌を歌うに違いない。それなのに、何を好んで、彼らは世界に「アメリカ憎し」の風潮をわざわざ広げようとするのだろうか。

 バグダットに打ち込もうとしている爆弾の一つ一つが、報復という名のテロとなって己の身に舞い戻ってくることを、彼らはなぜ気づかないのだろうか。今のアメリカを見ていると、物の怪に憑かれた好戦症候群患者に見えて、哀れ思えるほどだ。

 如何なる国もアメリカの属国でもなければ、如何なる国の民衆もアメリカの臣下ではないことを、一日も早く、アメリカ政府と国民は悟って欲しいものである。彼らが次のような記事を読んだら、少しは頭が冷えるだろうか?

最近のカナダの世論調査で、「世界平和の最大の脅威は何か」尋ねたところ、アルカイダ(21%)、イラク (17%)、北朝鮮(14%)などを抑え、断然トップだったのは36%選との米国だったという。
                                      (山梨日々新聞2/5)

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
追記

 『イラク戦争』の翻訳者・星川淳氏から頂いたメールによると、2月3日から7日まで、スコット・リッターが来日していたとのことである。外国時記者クラブや講演会で最新の話が聞けたようだが、時すでに遅し、聞く機会を失ってしまった。

 しかし、話のポイントを星川氏がまとめたものが下記のHPで見ることが出来るので、是非ご覧頂きたい。その中で、2月5日のパウエル国務長官の新証拠発言がいかにまやかしであるかを明らかにしている。日本政府も、イラクでの査察実態を知り尽くしたリッター氏のような専門家の反論に耳を傾け、アメリカ追従の姿勢を早急に改めないと、とんでもないことになってしまう。

 リッター氏は、「パウエル報告を根拠にイラク侵攻を強行すれば、ブッシュ大統領以下、米政権指導部は国内では弾劾訴追を受け、国際的には新しく発足した国際刑事裁判所に戦争犯罪者として訴えられるでしょう。小泉政権も同罪です」と述べたという。

 国際法廷に立たされる前に、小泉総理は最近の道路交通法によって、酒酔い運転の補助罪で20万円は間違いなく取られることになりそうである。

http://www.ribbon-project.jp/ritter.html

リッターの証言に関心を持たれた方は、是非、彼とウイリアム・リバーズ・ピットの共著となっている『イラク戦争』(1200円・合同出版刊)を一読されたい。アメリカの戦争プロパガンダの真実の姿を知り、イラク攻撃に対する正しい判断を下すためにも、多くの人々に読んで欲しい一冊である。(インターネットでも入手可能である)

     
               次回には、「イラク戦争勃発せば」について書くことにします。

 

                    
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