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世界恐慌の予兆

世界恐慌への赤ランプが点灯し始めた。10月16日付の日経新聞に「米連邦債務、ほぼ上限に」という見出しで掲載された10行ほどの小さな記事がそのシグナルである。

先ずその記事をご覧頂こう。

国債の発行額を含む米連邦政府債務が法定上限にほぼ到達した。これを受けてスノー財務長官は14日、上下両院に書簡を提出。政府の支払いを一部停止せざるを得ないとの見通しを示し、11月中旬までに上限を引き揚げるよう要請した。

米国政府の債務額は、法律で7兆3840億ドル(約808兆円)と決められてきている。国債発行という名の下で繰り返されてきた借金も、無制限に増やし続けることが出来ぬよう、歯止めがかかるシステムになっているのだ。

ここ20数年、国の内外から借金をし続けてきた米国は、クリントン時代に一息ついたものの、ブッシュ政権になってから再び借入額を増やし始めた。その結果、大型減税やイラク関連の巨額支出が重なってその債務残高は一気に膨らみ、とうとう限度額にあとわずか2500万ドル(約26億円)のところまで来てしまったというわけである。

このため、米財務省が緊急措置として発動したのが、一部連邦職員の退職年金基金への支払いの停止措置である。さらに公務員への給料支給を抑えるために、連邦職員の労働時間の抑制などが検討され始めたのだ。

しかしながら、スノー財務長官は「こうした借金抑制策も11月中旬には尽きる」と述べており、このままではやがて、さまざまな賃金や年金の支払いの停止により、行政機能に支障が出る恐れが出てきたのである。

そうした事態の発生を裏付けるように、11月6日付けの共同通信は次のような記事を流している。

首都ワシントンの名所で、親子連れで賑わう人気のスミソニアン博物館は、クリスマスを除き原則年中無休である。だが緊急措置の影響のため、11月下旬の米感謝祭に訪れる観光客は思わぬ「閉館」に出くわすかもしれない。

この数十年間、湯水の如くドル紙幣を刷り続け、国債を発行し続けてきたツケが回ってきたというわけである。とうとう借金行政のアメリカ政府も行き着くところまで来てしまったのだ。

スノー財務長官の発言の意味するところは、まさに米国の国家財政の崩壊が間近にせまっているということである。なのになぜか、アメリカのマスコミは、自分の国の存亡の危機をさほど気にとめていないらしく、まだその問題を大きく取り上げているところはないようだ。

しかし、このままでは、アメリカは借金の返済にまわす金はもとより、国民への様々な支払い停止処置をとらざるを得なくなってくることは明らかだ。

法律を改正し、政府に許された借金の上限枠を広げれば危機は回避できるのではないか、あなたはそう思われるかもしれない。しかし、ことはそんなに容易ではないのだ。それは一般的な家庭の債務返済を例にとってみればすぐわかる。

貴方の家でご主人の収入からして、ここが限度だと決めた借金の額を、もしもさらに増やさざるを得ないような状況に立ち至ったとしたら、年収のアップや特別収入の見込みが立たない限り、家庭崩壊の危機を予感するに違いない。

その状況は国と言えども変わりはない。石油の価格は上がり続け、イラク撤兵の見通しが遠のく米国にとって、借金上限額の修正幅は少々のことではすまないからである。なにしろ、ここ21ヶ月間の債務の増加は1兆ドル(約100兆円)を越す勢いであるのだ。

もしもブッシュ政権が選挙公約の減税を実施し、特定集団の利益のために石油価格の高騰を容認し続けるならば、経常赤字は間違いなく増え続け、政権末には7兆ドルの借金は12兆ドルへと倍増していることだろう。

こうして膨張する財政赤字を債務限度額の引き上げによって乗り切ろうとするなら、事態は容易ならざる方向に向かうことは必定である。

国際金融市場も米国の抱えた財政収支と経常収支の双子の巨額赤字に目をつむり続けることは出来まい。投資家は国内総生産の6パーセントに近づきつつある経常赤字もまた、近い将来ドル急落につながりかねないことを熟知しているからだ。

ジョージ・ソロスと組んで驚異的な高収益を上げた「クォンタムファンド」の設立者ジム・ロジャース氏は、10月17日付けの日経新聞で「ドルの信認が崩れるのは時間の問題だ、調整は遅くとも2年以内に起きる。マネーの信認が揺らぐと大国といえども凋落は避けられない」と述べている。

またルービン元財務長官は8日、「米政府が財政赤字縮小に向けて早急に手を打たねば、ドル安が一段と加速し大幅な金利上昇(債券の急落)を引き起こしかねない」と述べ、米金融市場が混乱に陥る可能性を指摘した。

国際資本市場の動向に詳しい元大蔵相財務官だった慶應義塾大学教授の榊原英資氏も、11月12日付の日経新聞で、「ブッシュ政権が財政赤字削減に本気で取り組むかは疑問で、双子の赤字の継続または拡大、石油価格の高値維持、そしてドル安の加速というシナリオが最もありうるように思われる」と述べている。

三者の意見は、このままでは米国債券の急落→ドル大暴落→株式大暴落→国家崩壊という流れが始まる可能性を示唆している。現に、ダブル債務を問題視して始まった最近のドル安は、対ユーロ、円、アジア通貨全てに対する「ドル全面安」の様相を呈し始めている。

そうした方向に進んだ場合の最悪のシナリオを想定すると、ドルは40〜50円程度までに暴落する可能性があると考えておいた方が良さそう である。もちろん対ユーロについても同様な事態が生じることになる。場合によってはドルが紙切れになる可能性すら棄てきれない。

一方、米国債の大暴落が世界第一位の保有国(第二位は中国)である我が国にもたらす影響も計り知れない。そうなれば、日本の国家財政の大崩壊、銀行の倒産、輸出企業の連鎖倒産のドミノ倒しが始まる可能性すら否定できなくなってくる。

ひるがえって、アメリカ国民の家計のバランスシート(貸借対照表)を眺めてみると、背筋が寒くなる。6月末の負債残高はとうとう10兆ドル(1100兆円)を超え、年間可処分所得の1.2倍に達しているのだ。

住宅のために大量の借金を抱え込み、資産の多くを株式市場につぎ込んだアメリカ人は、不動産と株式市場の崩壊が始まったら、ひとたまりもない。自己破産するしか道は残されていないはずだ。まさに国家と個人のダブル崩壊の始まりである。

歴史を振り返るまでもなく、かっての覇権国家バビロニアもローマも栄華を誇ったのはわずかな年数であった。世界に君臨してきた米国も第二、第三のバビロニア、ローマとならないという保証はない。

いずれにしろ、米国の財政と経常(貿易)の赤字の行方から目を離すわけにはいかなくなってきたことは確かである。今日ほど、世界経済の動向に「先見の明」を問われる時はない。

「世界恐慌」の始まりを告げる赤ランプは点灯したのだ!!

 

 

 

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