ホピ族の神話
アステカ民族とも遠い姻戚関係にある北米アメリカの先住民達はマヤやアステカと同様に、宇宙や世界の創造神話を保持し続けている。その中で代表的なものが、アリゾナのインディオ、ホピ族の神話である。
そこで語られている人類の歴史は、我々が学校で教えられてきた、現代文明こそがホモ・サピエンスが築いた最初の文明であるとする考えとはおよそかけ離れたもので、現代文明以前の遙かな過去の時代に幾つかの先史文明が存在し、それらの文明が幾度となく栄枯盛衰を繰り返してきたことを物語っている。
ホピの神話は、過去にあった3つの「太陽」(世界)を記録しており、各太陽の下に栄えた世界は「火」(噴火)や「氷」(氷河)や「水」(洪水)によって滅亡し、人類は今「第4の太陽」の世界に生きていることを伝えている。
神話の中で語られている世界の崩壊の回数や、その原因などについては多少異なる部分があるものの、先史文明の存在とその滅亡の様子は、旧大陸だけに限らず、ギリシャやインド、エジプトや中国など旧大陸の多くの民族の神話の中でも伝えられており、あたかも世界中の伝説や神話は、幾度となく繰り返された古代文明の大災害の記録簿のようである。
太古の時代に繰り返された文明の繁栄と滅亡の歴史が世界中のこれだけ多くの国や地域にわたって語り伝えられていることは、神話に描かれている内容が彼らの祖先の実体験の伝承であることを物語っているように思われる。つまり人類の歴史は、アカデミックの人々が説くように、猿のような祖先から始まり現代に至るまでゆっくりと直線的に進化してきたものではなく、最初の文明発生以来、栄えては滅び、滅びては栄えるジグザグのサイクルを繰り返してきていることを示している。
これらの多くの神話の中で、北米インディオの一族、ホピが伝える神話はすっきりしており単純で、現代の我々にとっても理解しやすい内容である。更にそこで語られている物語は現代人にとって多くの示唆に富むだけでなく、重大な警告をも投げかけている。
ポピの神話を読まれた読者は、過去の人類が幾たびか自らの文明を滅亡へと導いた過ちを、我々もまた、既に現代社会において犯してしまっていることに気づかれるであろう。そのことは、現代文明が陥った過ちに一日も早く気づき、早急に軌道修正をしない限り、現代文明の破局もあり得ることを意味している。しかも。マヤの伝説は、「第4の世界」はスタートしてから既に相当の年月を経過しており、その終焉は必ずしも遠い将来のことでないことを伝えている。
ホピ神話のすごいところは、数千年、数万年に及ぶ人類の過去の歴史を明確に伝えているだけでなく、「第4の世界」の将来について明確な予言を伴っていることである。この予言については「創造の神話」をご覧頂いた後で触れることにする。
次に掲載する「ホピの神話」は、アリゾナ州北部に住むホピ族の30人の長老がアメリカ大陸先住民研究の世界的権威として知られるフランク・ウォーターズに語り伝えた人類の「創造の神話」、「移動の伝説」、「儀式の意味」をまとめた『ホピ・宇宙からの聖書』の一部を抜粋し、要約したものである。詳しい内容を知りたい方は、同著をご一読されることをお勧めする。
ホピの創造の神話:「第1の世界」の創造と滅亡
最初の宇宙はトクペラ(無限宇宙)であった。この無限宇宙には初めは創造主タイオワしかいなかった。始まりもなく,終わりもなく、時も空間もなく、形も生命もなかった。このような全くの無の宇宙にタイオワは初めて有限を生み出した。それが創造主の甥(神話によっては息子とされている場合もある)となるソツナングという神であった。
ソツクナングはタイオワの計画に沿って宇宙を秩序正しく整え、九つの宇宙を造り、水と風を生んだ。その後、ソツナングは彼の手足となって働いてくれるコクヤングティ(クモ女)を創造した。ソツクナングの指示に従って、クモ女は土を丸めて唾と混ぜ、その上に創造の知恵で出来たケープ(覆い)を掛け、創造の讃歌を歌った。覆いをとるとそこには、ポカングホヤとパロンガウホヤの2神が誕生していた。
ポカングホヤとパロンガウホヤの2神は地球を隈なく旅をして高い場所と低い場所を固めた。自分たちの役目を終えるとポカングホヤは北極に、パロンガウホヤは南極に送られ、地球を正しく回らせる役目を与えられた。クモ女は、次に樹木、灌木、草、花、等の植物を創造して地を覆い、一つ一つの生命に名前を与えた。次に、あらゆる種類の動物と鳥たちを創造し、地の四隅に向かって広がるように命じた。
ソツクナングの造った世界を見てタイオワは言った。「大変良くできた。次は人間の番じゃ。これでわしの計画が完成する」 そこでクモ女は赤、黄、白、黒の4つの色の土を集めて唾液で固めてケープで覆った。前と同じように創造の歌を歌い覆いをとると、ソツクナングそっくりの人間がいた。次に、彼女は自分の姿に似せて四人の男のパートナーとなる四人の女性を造った。
やがて太陽が昇ると人間達は固まり、生命を持つ者となった。ソツクナングは人間達に向かって次のように告げた。「わたしは、あなた方が生き幸せになるためにこの世界を与えた。ただ一つ、あなた方に求めることがある。いついかなるときにも創造主を尊ぶこと。知恵と調和、そしてあなた方の創造主の愛を尊ぶことである。このことは、あなた方が生きている限り忘れることのないように」
最初の人類はその赴くところに行き、増え始めた。
かくして、最初の人類は地の表に増え広がり、幸せに生きていた。彼らは肌の色も異なり、言葉も違っていたが、一つのように感じ、話さずとも互いに理解することができた。鳥や獣もまた同じであった。人も獣も一つのように感じていた。だが一方で、創造主を敬えというソツクナングとクモ女の命令を忘れる者たちが、徐々に現われて始めていた。
その頃、彼らの間にお喋り人間(ラバイホヤ)が現われた。彼はモクニ(ツグミに似た鳥)と呼ばれる鳥の形をして現われ、人問たちに、動物と人間の違い、人の肌の色や言葉の違い、創造主の計画に対する信仰の違いなどを吹き込んだ。動物たちが人を恐れて逃げるようになったのもこの頃であった。それは動物たちの守護霊が現れて、彼らを野生化したからであった。
また、彼らの問に、カトヤという美青年が大きな頭をもつ蛇の姿をして現われた。彼はさらに人々を互いに引き離し、原初の知恵から遠ざけた。人々は互いを疑い、非難し合って、ついには暴力に訴えて戦い始めた。その間もモクニはしゃべり続け、カトヤはさらに人々をだまし続けた。そこには休息も、平和もなかった。
だが、どの民族、どの言語の人々の中にも、創造主の法則によって生き続ける僅かな数の人たちがいた。彼らのもとにソツクナングはやってきた。大風の音とともに突然彼らの前に現われたソツクナングは彼らにこう告げた。「わたしは、事態をずっと見守ってきた。それがあまりにひどいので、わたしは伯父のタイオワにこれを告げた。わたしたちは、この世界を滅ぼし、あなた方が初めからやり直せるよう新しい世界を創造することに決めた。あなた方は、わたしたちの選んだ者たちである」
人々は、注意深くその指示に耳を傾けた。ソツクナングはいった。「あなた方はある場所に行く。頭頂の波動中枢(コパビ)があなた方を導くだろう。この内なる知恵は、あなた方にある光景を示す。それは昼は特定の雲、夜は特定の星となって、あなた方を導く。何も持たずに行け。雲が止まり星が止まるときに、あなた方の旅は終わる」
こうして、これらの選ばれた人々は世界の各所で突然姿を消し、昼は雲、夜は星に導かれて旅立っていった。他の人々は、どこへ行くのか聞いては、彼らをあざ笑った。「星も雲も見えないぞ」彼らは言うのであった。彼らは頭頂にある霊的世界を見る中枢の扉を閉ざされてしまっていたからである。それでも、雲と星を見る人々を信じてついていくわずかな数の人々がいた。
人々が所定の場所に集合し終わると、ソツクナングは彼らを蟻人間が住む地下の祭礼所(キヴァ)の中へと導いた。ソツクナングは人々に言った。「蟻人間から教えを受けよ。彼らは働き者である。彼らは、お互いに平和のうちに生きている。彼らは創造主の計画に従っているのだ」。人々が地下に下り、蟻人間と共に安全に暮らしている間に、ソツクナングは世界を火によって滅ぼすことを決めた。そして火山の口を開いて火の雨を降らせ、この世界を滅ぼした。
「第2の世界」の創造と滅亡
「第1の世界」が滅びた後、地球が冷えるまでには時間がかかった。冷え終わった後、ソツクナングはそこを清め、「第2の世界」の創造に取りかかった。かって海であったところは陸に、陸であったところは海に変え地上の様子を一変させた。すべてが完了したところで、ソックテングは蟻塚の屋根をたたき、避難していた人々に外に出るよう呼びかけた。
ソックナングは人々にいった。「わたしの造ったこの第2の世界に入りなさい。前ほどは美しくないが、それでも美しい世界である。増え、幸せに過ごしなさい。しかし、創造主とその掟を心にとめなさい。創造主に対する讃美の歌が聞かれるうちは、あなた方はわたしの子であり、わたしに近い」
こうして、人々は「第2の世界」に現われた。そこは広大な陸地で、以前の世界とは一変していたために、かっての悪しき世界については何も思い出すことがなかった。人々は急速に増えて地の四隅に広がり、地球の裏側にまで広がっていった。「第2の世界」では、頭頂の中枢がまだ開いていたので互いの心の中を見ては話すことができた。また、彼らはソツクナングを身近に感じ、創造主タイオワを称える歌を歌い続けた。
「第2の世界」は以前のに比べて自然の幸に恵まれていず、動物たちも離れてしまったために、人は自ら仕事に励み手で物を作り、食料を集め、家を建てねばならなかった。次第に村が出来、その間を結ぶ道路もでき、交易が始まり、互いに物を売買するようになっていった。
ところが、交易が盛んになるにつれて、得れば得るほどますます物を欲しくなりだし、創造主への賛美を忘れ、売り買いし蓄えた物に対して賛美をするようになっていった。その結果起こるべきことが起こり、人々は争い始め、村同士の戦いが始まった。創造主は再び世界を滅ぼすことを決め、心の中で創造主に祈る者だけを再び蟻人間のキヴァに導いた。
人々が安全に避難すると、ソツクナングは南極と北極をそれぞれ守っている双児のポカングホヤとハロンガウホヤに持ち場を離れるように命じた。双児が持ち場を離れると、世界はバランスを失い、回転が狂って二度も引っくり返った。山々は大音響とともに海になだれ込み、海と湖は陸に覆いかぶさった。そして、それらが冷たい生命なき空間を巡る間に、世界は厚い氷に閉ざされた。「第2の世界」はこうして終わりを告げた。
「第3の世界」の創造と滅亡
「第2の世界」を形成している元素のすべては、長いこと生命のない氷の中に閉ざされたままであった。しかし地底では、人々が蟻人間と共に幸せに暮らしていた。
ソックナングは双児に、両極に戻るよう命令した。大きく身を震わせながら、惑星はふたたび回転し始めた。地球は地軸の周囲をなめらかに回転し宇宙の軌道に乗ると、氷はまた溶け始めて世界は温暖になった。ソツクナングは、「第3の世界」の創造を開始した。大地と海を整え、山々と平原に樹木を生い茂らせ、あらゆる形の生命を生んだ。
こうして地球に人間が住める頃になると、「第3の世界」でふたたび人類は増え広がり、生命の道の上を進み続けた。「第1の世界」では人々は動物と一緒に素朴な生活をした。「第2の世界」では手工品や家屋、村落を発展させた。この「第3の世界」では、人口も増え、人々は大都市や国々、大文明を築くまでに急速に発展した。しかし、このことが、創造の計画に従いタイオワとソツクナングに讃美の歌を送ることを、難しくさせる結果になった
あまりに多くの人々が生産力を邪悪な方法で使い始めた。非常に多くの人々を堕落させる悪徳で世界的に有名になった女が現れた。あまりに沢山の男たちが自分の愛顧を求めてトルコ石のネックレスをくれるので、地軸の先につながる梯子に巻きつかせられるほどだ、とこの女は豪語した。
知恵ある人々は創造主への讃歌をいっそう声高にうたいつづけたが。彼らにほとんど耳を貸さない人々もたくさんおり、彼らは、弓族の指導のもと、創造の力を邪悪で破壊的な方向に向けた。恐らくは、あの女の影響によるものだろう。ある人々は空飛ぶ楯(パツボタ)と呼ばれる超高速の航空機を作った。これに乗って沢山の人々が他の都市を攻撃し始めたが、この乗り物はどこから来たのか分からないほどの速さでまた帰ってきた。「第3の世界」も、かつてと同様に腐敗し、侵略戦争の場と化した。
今回は、ソツクナングはクモ女のところに来てこう告げた。「今度は最後まで待つ必要はない。今すぐ手を打たないと讃歌を歌い続けている人々まで汚されてしまうだろう」。そのため、もはや蟻塚まで逃げ延びる時間がなかった。そこでソツクナングはクモ女に命じて葦の木を切ってその中の空間に人々を入れ、少量の水と食料を詰めて封印した。クモ女もみんなの面倒をみるため一緒に葦の中に入った。
ソツクナングが地上の水の力を解くと、山々より高い大波が陸地を襲い、陸という陸は破壊され海中に沈んだ。こうして神を信じる少数の人々は葦の船の中にかくまわれ、大洪水の中を漂い大波のぶつかり合う音を聞いた。いつ終わるともしれぬほど長い間、彼らは海の上を漂い続けた。最後の動きが止まると、彼らが留まっている場所はかっての最高峰の山の峰で、周りは見渡す限り海であった。
乾いた陸地を探すために人々は次々と鳥を飛ばしてみた。しかしどの鳥も疲れ果てて帰ってきた。近くには陸地はないことを悟った彼らは内なる知恵の導きによって、日の出る方向(東)に向かって更に船を漕いだ。途中幾つかの島々が散在しているのが目に留まった。それらの島に短期間上陸し、葦や竹に似た植物で筏を作り、さらに東に向かって進んだ。
長い旅の末、人々は低い風の音を聞きはじめ、陸地を見つけた。家族と部族は、次々と喜びの声をあげて上陸した。陸は広く美しかった。大地はなだらかで、肥沃であり、樹木や草、実を結ぶ木で覆われ、食物が豊かにあった。人々は喜び、そこに何年もいた。だが、クモ女はこう告げた。「ここは第4の世界ではありません。生活するのにあまりに楽過ぎます。あなた方はふたたび邪悪な道に入ってしまうでしょう。進みなさい。道はさらに険しくなる、といわれています」そこで、人々は嫌々ながら、さらに東に向けて進むことにした。
人々は昼も夜も必死に筏を漕ぎ、やや北寄りの東へと進んだ。ついに彼らは陸をみつけた。海から高くそそり立ち、見渡す限り北と南に広がっている。大いなる力強い陸だ、と彼らの内なる知恵は告げた。ソツクナングから与えられた「第4の世界」にようやくたどり着いたのであった。その地で、人々は創造主がこの「第4の世界」を守るために選んだ霊「マサウ」に出会い、そのマサウの指示の下、いくつかの集団に分かれて移民を始めることになった。
「分かれる前に、いっておかなけれぱならないことがある」ソツクナングは「第4の世界」の岸辺に立っている人々に向かっていった。「この第4の世界の名はツワカキ、つまり完全な世界である。その理由はいずれわかるだろう。かつての世界ほど美しくも、楽でもない。高いところや低いところ、熱と寒さ、美しいところや荒れたところがある。あなた方に選びとれるすべてのものがここにある。
あなた方が何を選ぶかが、創造の計画を今度こそ遂行できるか、あるいはいつの日かふたたび世界を滅ぼすかを決定するのだ。さあ、あなた方は分かれて違った道を進み、地のすべてを創造主のために所有せよ。あなた方のどの集団も星の明かりに従うように。星が停止した場所があなた方の定住する場所である。行きなさい。あなた方は善霊から助けを得るために、頭頂の扉を開けたままにして、わたしが語ったことをいつも覚えておくようにしなさい」
「また会おう」と彼らは呼び掛け合って、それぞれの定められた地に向かって分かれていった。こうして人類の「第4の世界」、つまり現代文明は始まった。 ・・・・・・・・・ これがホピの神話の「創造神話」のあらましである。
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人類の歴史は教科書とは違っていた!!
見てきたように、ホピの「創造神話」が伝える人類の歴史は、我々が学校教育で教えられてきたものとはまったく異なるものである。我々が学んだ人類の発展史は、猿のような祖先から始まり、現代に至るまでゆっくりと直線的な進化を遂げてきたものとされており、エジプト、メソポタミア、黄河、インダスの4大文明こそが人類の文明の曙であるということになっている。
しかしここで語られている内容は、4大文明の遙か昔に三つの先史文明が存在し、それらが栄枯盛衰を繰り返し、現代文明へとたどり着いたことを示している。それは決して直進的な進化ではなく、滅亡と復興を繰り返すジグザグの歴史である。イスラム教に帰依する前のイランのアヴェスター系アーリア人が保持するアヴェスター教典も、同様な歴史を伝えている。
アヴェスター教典によると、最初の時代の人々は純粋で罪がなく、背が高く長寿であった。だがその時代が終わるころ、悪魔王が聖なる神アフラマズダに戦いを挑み、荒々しい大災害が起こった。第2の時代、悪魔王は成功しなかった。第3時代は善と悪が完全に均衡した。第4時代(現代の世界)は悪が勝利して始まり、その後も変わらず世界に君臨しているという。
ポポ神話に登場する原初の文明である「第1の世界」では、人々は温暖な気候と食べ物に恵まれ、テレパシーによって動物とも意志疎通が出来、素朴で幸せな暮らしを送っていた。「第2の世界」では手工品を作り、家屋を建て、村落を発展させた。そして、「第3の世界」では、多くの国々や大都市を築き、文明を急速に発展させ、空飛ぶ乗り物やそれを利用した近代的な兵器を保持するまでに至った。
これらの世界は、発展しては滅び、滅びては発展する栄枯盛衰の歴史を繰り返すことになる。先ず「第1の世界」は火山活動によって滅び、「第2の世界」は地軸の傾き(ポールシフト)による氷河期の発生によって滅亡し、そして「第3の世界」は世界を覆う大洪水によって終末を迎えている。
ホピ神話で語られるいる世界を破壊へと導いた「大寒波の到来」の話は、「創造神話」以外にも、大洪水の神話ほど多くはないが、世界の各地に残された古い伝説の中にしばしば登場している。
南アメリカの中南部地方のインディオのトバ族に残る古代の神話は、「凄まじい寒さ」の到来によって、半神の英雄アシンによって救われた一部の人を除いて全ての人々が死んでいった様子が語られている。
アーリア系のイラン人が保持するアヴェスター教典やゾロアスター教の最古の教典は、彼らの遠い祖先が伝説の地、エアヤナ・バエジョに住んでいた時に襲った「猛烈で破壊的な氷結」をもたらした大災害について述べている。
長い間温暖で豊かな土地であったエアヤナ・バエジョは夏が7ヶ月で冬は5ヶ月であった。野生の生物や穀物が豊かで、牧草地には小川が流れていた。ところが悪魔王アングラマイニュが暴れたために冬は10ヶ月になり夏は2ヶ月しかなくなって、水も土も木も冷たくなってしまい全てが雪に覆われてしまった。
この急激な寒冷化による大災害の到来を、「公正なイマ」は神アフラマズダから事前に知らされ、避難の準備をしている。アフラマズダはイマに地下に大規模な地下室と格納庫を造るように命じる。そこに川を作り、鳥が羽ばたく森を作り、流れの岸には枯れることのない緑の草と、果汁が豊かな果物の木を植えさせている。
更に、地下にはあらゆる種類の動物、大きな獣も小さな獣も、家畜も、駱駝も。犬も鳥も入れさせた。こうして、用意された地下に逃れたイマと善良な人々、動植物は氷と雪で覆われた破壊的な「冬」から生き残った。
「ポピ神話」で語られている「第3の世界」の様子は現代文明に非常によく似通っている。人口増と大都市建設、超高速の航空機と近代兵器による戦争。富と肉欲を求める世界、まさに20世紀後半の世情の生き写しのようである。やがてこの「第3の文明」も大洪水によって滅亡することになる。第3世界滅亡の大洪水については、地球的規模の大災害として、世界各地に残る神話の中で頻繁に語られている。
洪水神話として最もポピュラーなものが、旧約聖書でお馴染みの「ノアの箱船」である。神は人類の邪悪な行いに怒り、大洪水によってすべての生命を地球上から消し去ろうとする。しかしノアとその一族だけは、信心深さと善行ゆえに、あらゆる種類の動物の雌雄一組とともに、巨大な箱船に乗って世界的規模の大洪水から救われる。その後ノアの子孫は繁栄しユダヤ人の祖先となった。
古代ギリシャ・ローマでは、同様な伝説が「デウカリオーンの物語」として伝承されている。神ゼウスは地球上の人間全てを消滅させることを決め、世界を洗い流す大洪水を起こす。しかし巨人族の一員である父親のプロメテウスから大洪水が来ることを知らされた王デウカリオーンは、水に浮く巨大な箱を造って、妻のピュラーとともに乗り込み難を逃れている。ユダヤ人がノアを先祖と考えているように,古代ギリシャ人はデウカリオーンを祖先と見なし、多くの町や神殿を造った存在と見なしている。
古いメソポタミアの史料「ギルガメシュ叙事詩」の中でも、ポポ神話やノアやデウカリオーンの話によく似た洪水の物語が語られている。ウルクの町の王であるギルガメシュはウトナピシュティムから何世紀も前に経験した全世界を破滅させる大洪水の物語を聞かされた。そのときも、原因は神の怒りであった。
神エンリルは、下界の人間たちの絶えざる喧騒によって天上での眠りが妨げられるのに嫌気がさした。ウトナビシュティムは別の神エアから大洪水が起こることを知らされ、水に浮く箱を造り、生命あるものたちを雌雄一組ずつで満たした。例のごとく大洪水が押し寄せ、そして引いた。英雄となった人物はここでも烏の行動によって陸地が現れたことを知ることになる。
更にインドの地には、ベーダ族による「マヌの洪水伝説」がある。あるマヌと呼ばれる賢い男が沐浴をしていたところ、手の中に小さな魚が入って「命を助けてください」と懇願した。男は哀れに思って容器に魚を入れ家に持ち帰った。翌朝になると魚は驚くほど大きく成長しており、男は湖に連れていかなければならなかった。すぐに湖も魚にとっては小さくなってしまった。「海に放してくれ。そうすれぱもうすこし楽になれる」と魚はいう(実は神ヴィシヌの化身だった)。それからマヌに大洪水がやってくると警告た。
マヌが命令されたことを実行すると同時に太洋が盛り上がりすべてを水没させた。ヴィシヌは箱舟を引っ張って溢れる水の面ををわたり、やがて「北の山」の頂上に船を着けた。魚は言つだ「おまえを救った。船を木に留めろ。山にいるあいだ水に流されないですむ。だが水が引くのに合わせて船も下げろ」。マヌは水とともに山を下った。大洪水はすべての生き物を流し去り、残ったのはマヌだけだった。
マヌは洪水からのがれた動物や植物と共に新しい世界を造り始めた。1年後に水の中から「マヌの娘」と名乗る女性が現れた。二人は結婚し子供を作り、現在の人類の祖先となった。
その他にも、世界の破壊と再生の一連の洪水物語は、あらゆる地域、中東、ペルシャ、チベット、モンゴル、中国、東アジア、南アジア、太平洋上の島々、北米、中米、南米で語られており、世界中では500以上の洪水伝説があるといわれている。
こうして見てみると、命あるものをすべて滅ぼしてしまうほどの破壊力をもった「氷結」や「洪水」の話は、世界中のあらゆる地域の伝説や神話に見られることが分かる。そこで語られる内容はその地の文化、地形、紀行、宗教、語族など様々な地域においても、大きな違いはない。これだけ多くの地域で語り伝えられた神話が同一の物語から成り立っていることを考えると、そこで語られている出来事は、紛れもない「歴史的事実」であったのではないかと考えるのが自然ではなかろうか。
現代人はいつの間にか、自分たちの先祖が伝える神話や伝説を単なる「作り話」として、おとぎ話の世界へ閉じこめてしまうようになってしまった。最近では、むしろ「神話」は「嘘」または「偽り」と同意語と考えている人がいるほどである。しかし、神話に使われている比喩的表現はそのまま鵜呑みにすることは出来ないものの、そこで語れている全体像は多くの真実を含んでいると考えるべきではなかろうか。
エジプトのスフィンクスを地質学的に調査し、その建造年代を従来の定説より数千年さかのぼることを突き止めたアメリカの地質学者ロバート・ショックは、神話の仕組みを次のように述べ、神話の語る歴史的真実を見過ごすべきでないと警告している。
彼らは、この世界が自分たちに残された予言通りに進んでいると考えている。パニヤッカ氏の説明を更に詳しく見てみると、この世界は,まず白い兄弟たちの文明が栄える。次第に彼らはおごり高ぶり、まるで地上の支配者になったように振舞う。白い兄弟は,「馬以外のものに曳かれる車」に乗ってやってきて、ホピ族が幸せに暮らしている土地を犯す。次に,白い兄弟は「空の道」を作り,空中に「くもの巣」をはり,陸上にも「鉄の蛇」が走る無数の線を張りめぐらす。
やがて、「第一の炎の輪」の中での戦いが始まり,しばらくすると、「第二の炎の輪」の中でも戦う。そのとき白い兄弟たちは恐ろしい「広口びん一杯の灰」を発明する。この灰は川を煮えたぎらせ、不治の奇病をはやらせ、大地を焼き尽くして、その後何年も草一本生えないようにしてしまう。
ここまでは、第二次世界大戦までの人類と世界の歩みを端的に表している。「白い兄弟」たちの文明は、文字通り白人社会そのもので、「馬以外のものに曳かれる車」とは自動車を表し、「空の道」は世界の空を行き交う航路で、空中に張る「クモの巣」や陸上の「無数の線」は、電話回線やハイウエーや鉄道を意味している。「鉄の蛇」とは正に何両にもつながった鉄道列車の姿そのもである。
「第二の炎の輪」の中で戦う第二次世界大戦においては、「広口びん一杯の灰」つまり、核兵器が開発されそれが実際に使われることを予言している。
ここから先の予言は、近年に入っての宇宙開発の様子を暗示し、その行く先に待ち受けているのは「第三の炎の輪」の中で戦う第三次世界大戦を示唆している。白い兄弟たちは空のかなたで見つめるタイオワの怒りに気づかず、ますますおごり高ぶって、とうとう「月にはしごをかける」までになる。この段階でタイオワは「第四の世界」を滅ぼすことを決意する。その時期は、白い兄弟たちが「空に大きな家を作るとき」だと予言している。
1969年7月21日、アームストロング宇宙飛行士の月着陸によって、すでに人類は「月へのはしご」をかけ終わった。タイオワの決断は既に下されてしまったのだろうか。更に、アメリカをはじめとした白人の世界の人々が今挑戦しているのが、他ならぬ「スペース・コロニー」である。地球を回る宇宙空間に数百人が常駐できる巨大なスペース・コロニーは、我が国も参加していよいよ組立の最終段階に入っている。このスペース・コロニーこそ「空に作る大きな家」以外の何物でもないことは疑いようがない。
とすると、「第四の世界」を滅亡へと導く「第三の炎の輪」の中の争い(第三次世界大戦)が始まる時期が遠くない将来に迫っていることになってくる。そしてそのときには、地上では、タイオワの白い兄弟に対する怒りの現れとして、「飢え」と「疫病」と同時に、「火」と「水」による地球的規模の大異変が襲って来ることになるのである。
オライビには、大勢の人間が乗った箱状の大きな「乗りもの」が崖の淵まで来て,今にも谷底へ落ちそうな状態の岩絵が残されている。乗り物からは、落下寸前の乗り物から、あわてふためいて飛び降りて逃げ延びようとしている人々の姿も描かれている。しかし、二本の車輪ははずれて空中に舞い、既に車はその機能を失ってしまっている。後は残された人々と共に深い谷底へと落下するのを待つばかりである。
この岩絵に描かれた車が惑星地球号の姿だとすると、車から飛び降りようとしている人々の姿は、一大艱難を迎えた人類の阿鼻叫喚の姿を思わせる。これこそが「ホピの予言」の最後に登場する「世界の終末」の姿そのものではないだろうか。
ホピの創造神話は、人間は地球の守護者であり、自然や動植物に対する世話係であることを教えている。従ってもしも人間がこの地球上から消えてしまったら、自然界や地球のバランスは崩れてしまい、この世はカオス状態に立ち至ってしまうと述べている。
しかしながら今日の多くの人々は、自分たちが地球や自然に対して、守護者や世話係としての重要な任務を背負っているなどということはすっかり忘れてしまっており、物質的欲望の充足のために、愚かな核実験を性懲りもなく繰り返し、無軌道に熱帯雨林を伐採し、命の源である大洋へ汚染物質を垂れ流し、生態系を狂わせ続けてきている。
創造主を尊び、自然との調和を図ることを忘れ、物質的欲望の充足を最大の目標に掲げた今日の世界は、ホピの「創造神話」が伝える過去の3つの世界とあまりにもよく似て来てしまっている。
物質主義の束縛から逃れて霊的意識を取り戻し、地球や自然に対する守り手としての責任や任務に一日も早く目覚めなければ、我々人類の前に待ち受けているのは、ポピ族の言う「大いなる清めの日」の到来であろう。それは人類が過去の文明で体験した歴史の再現である。地球や自然は人間の暴挙をいつまでも許してはくれない。
もしも、人類の多くが浄化されることになるであろう「大いなる清めの日」の到来が避けられないとするならば、それはマヤの長期暦の1サイクルが終わる13バクトゥンの日(13.0.0.0)、つまり西暦紀元後2012年12月23日ということになるのであろうか。マヤ文明の後を継いだアステカ文明が残した「大陽の暦石」がその日の到来を語っているのかもしれない。
国立人類学博物館のアステカ室の正面に飾られた「大陽の暦石」。
古代アステカの人々の間で伝承されてきた物語に、「五つの大陽の伝説」がある。この伝説は、過去に4つの大陽(世界)が滅び、その後に5番目の現代の大陽の時代がやってきたことを伝えている。メキシコシティーの国立人類学博物館の代表的な展示物である、アステカのカレンダーストーン(大陽の暦石)には、4つの大陽と、中央に5番目の大陽の姿が刻まれており、「五つの大陽の伝説」を伝えている。
資料によって年数表記や表現内容に様々なバリエーションがあって、一定していないが、そのうちの一つは、5番目の文明に当たる現代文明が、マヤ暦の4アハウ8クムク、すなわち紀元前3114年8月13日の闇夜に始まり、4アハウ8カンキン、すなわち現代の暦の2012年12月23日に「地球の大変動」で破局を迎えると伝えている。