カワチ遺跡  ー 世界最大のレンガ造り都市があった! ー

地上絵で有名なナスカに隣接するカワチから壮大な都市跡が発見されている。

チャーターしたセスナ機で、ナスカ空港から遺跡の空撮に向かった。お馴染みの地上絵「クジラ」や「三角推図形」、「サル」などを眺めたあと、砂漠の上空を南西に向かって飛行すること数分、こんもりとした丘の上に発掘中の遺跡が見えてきた。

地上絵と同様、砂漠の中の遺跡ははっきり見えにくい。何回か旋回するうちにその全貌を捉えることができた。発掘が行われているのは一箇所だが、周囲にも同じような遺跡が散在しているのが見える。その領域は150ヘクタールに及ぶというから壮大な都市遺跡だ。

取り外した窓から撮影を始める。丘に沿って建造物の土台部分と思われる跡が頂上部に向かって連なっている。カワチはピラミッドと神殿 からなる宗教都市だったようなので、連なる土台部分はピラミッドの基壇や祭壇の跡かもしれない。上空からはその高さがよくわからないが、場所によっては10〜20メートルもありそうなものもある。

発掘に携わった考古学者が描いた想像図(写真5)を見ると、階段式のピラミッドと神殿が整然と林立し、壮大な宗教都市を想起させる。

不思議なのは、丘の頂上部が大きくえぐられている点である。(写真4)。丘の一角を深く掘ったものと思われるが、ここには一体何があったのだろうか?
 

カワチ遺跡の謎

1980年代の始めにその存在が明らかとなったカワチ遺跡は、3年ほど前から、スペインとペルーの合同調査隊によって本格的な発掘調査が始まり、現在も継続中である。「ピラミッド」や「神殿」は日干し煉瓦で造られているというから、全体の発掘が完了すれば、煉瓦造りの世界一大きな宗教都市跡が全貌を現すことだろう。

発掘物からすると、ナスカ時代の宗教都市跡ではないかと思われるが、年代は定かでない。仮にナスカ時代のものだとしても、この場所にはさらに前の時代に人が住んでいた痕跡があるというから、発掘された建造物は、太古の時代に使われた聖なる丘を利用して造られたものかもしれない。

これだけ広大な都市が砂漠の中に埋没していることを考えると、カワチは大災害に見舞われ崩壊したものと思われるが、それが何時のことか?、人々はどこへ行ったのか?、ナスカの地上絵との関わりは? まだ謎解きは始まったばかりである。

それにしても、カワチ遺跡が先のページで見たカラル遺跡やシクラス遺跡に比べると3000年も後代の遺跡であることを考えると、そこで使われているのが、日干しレンガであるのは奇妙である。ピラミッドにしろ神殿にしろその建造技術はカラル遺跡などに比べると数段進歩していなければおかしいのに、現実は見てのとおり、石造りからレンガ造りへと後退している。石造建築のあの技術は、一体どこへ行ってしまったのだろうか?

掲載した空撮写真は本邦初公開である。

 

        

 

写真1

小高い丘の斜面に沿って建造物の痕跡が残されている

 

写真2

手前の発掘跡の後方にも、同じような遺跡が
見える

写真3

クローズアップ

写真4

丘の頂上部がえぐられているのが興味深い

 

 

 
 



コンピューターグラフィックで描かれたカワチ遺跡の復元図

カワチにはピラミッドと神殿が建ち並ぶ壮大な宗教都市が存在して
いたようだ。推定されるピラミッドは5層構造で、高さは18メートル。

 

 

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