一寸の虫たちを追う


昆虫は地球上で最も種類の多い生物で、その数は全動物のおよそ75%を占めている。この大家族の昆虫であるが、その中で日本にはおよそ10万種ぐらい がいるのではないかといわれている。ただ、ここ十数年絶滅種が増え続けているようなので、その数はかなり減少してきているものと思われる。

生物多様性条約締結国会議が日本で行われるのに併せて、5月22日にBS−TBSテレビで「地球いきもの命のつながり」という番組が放映された。私がペルーアマゾンで撮影した何種類かの絶滅危惧種の野鳥や動物たち の写真が紹介されていたので、ご覧になられた方もおられたかもしれない。

「多様性」とは、さまざまな地域や、さまざまな大きさ、さまざまな餌を食する生命体など、存在の広がりの状況を表す言葉である。 多種多様な生物が共生してこそ、人間を含めた全ての生命体がこの地球上で存在することが出来ているのである。

その最先端にいる生命体の一つが、他ならぬ体長がわずか数ミリから数センチの昆虫たちである。もしも、これらの虫やクモたちが姿を消してしまったら、それらを餌とする野鳥や小動物たち、さらには彼らによって種を運ばれている野草や木々たち・・・・・ そして最後には私たち人間が、この世から姿を消すことになってしまう ことになる。

 

 

 
     

ミヤマザクララの開花を見届けに幾度も山の中に足を運ぶうちに、サクラの木やその周辺に、見慣れないたくさんの小さな昆虫たちがいるのを目にして、カメラに収めることになった次第は「マクロレンズの世界」で述べた通りである。

そのうちに、一寸の虫に宿る五分の魂の輝きに惹(ひ)かれ、庭や家の前の畑に出て、そこに咲く草花や木立の葉に宿る昆虫たちを見つけては撮影するようになった。早朝と夕方、一日2〜3時間ほど時間を取って彼らを追いかけているうちに、いつの間にかそんな生活が癖になって、3週間が過ぎてしまった。

私のそんな変化を知った愛猫チロは、私がカメラを持って外に出ると必ず追いかけてきては、内塀の上で私の撮影の姿をじっと見守っている。膝をついたり腹這いになって撮影していると、普段見慣れない姿だけに、 「私のご主人様はいったい何をしているのだろうか?」と、不思議そうな顔で眺めている。

日頃、その姿は見かけながらも関心が向かなかったために、その名称はもとより素性も知らなかった小さな隣人たち。掲載に当たって図鑑を何冊か購入して調べてみたものの、なかなかその種類を特定できず、幾つかの昆虫たち はその名前を記すことが出来なかった。また、記載した名前にも間違いがあるかもしれないので、昆虫に詳しい方がおられたら、是非教えて頂きたい と思っている。

体長がわずか2〜3ミリしかない小さなクモやムシたちを長い時間撮影し続けていると、大きな鳴き声を上げて頭の上を飛ぶオナガドリやヒヨドリが、まるで翼竜のように大きく感じられる時がある。あるとき、レンズ越しに 幼虫となったばかりの小さなテントウムシと草の葉を眺めていると、突然巨大な生き物が横切る姿に出くわし、びっくりしてカメラから目を離すと、なんとそれはそばに寄ってきたチロの勇姿であった。

1センチ足らずの昆虫たちにとって、猫や犬の姿はとてつもなく巨大な恐竜のように感じられているのに違いない。かって恐竜と共存した人類は、そんな昆虫たちと同じ思いで過ごしていたのだろうか。今回撮影した30種類ほどの彼らの姿を、2回に分けて掲載することにした。興味のある方はご覧になって頂きたい。

 

 



 


キリウジガガンボ
体長14〜18ミリ
 

   

 



 


クロウリハムシ
体長6〜7ミリ
 

ヒメハラナガツチバチ
体長3〜4ミリ

モモブトカミキリモドキ
体長5.5〜8ミリ

 



 

ハナグモ


このクモ、目は一体
幾つあるの? 実は8つの
単眼があるのです。
 


ハエトリグモ

4つの目は確認できるが
後の4つはどこにあるのだろう?

 

 



 


ホソヘリカメムシ
体長14〜17ミリ
 


チャイロクチブトカメムシ
体長10〜14ミリ
 


羽を広げた
チャイロクチブトカメムシ
 

 



 


ナガメ @

カメムシの一種で体長は
7〜9ミリ
 

ナガメ A


 

ヒメナガメ @

 

 

 



 


 

ヒメナガメ A


 


交尾するヒメナガメ
 

コアオハナムグリ
体調11〜16mm

 



 


ナガコガネグモの幼体

体長は2〜3ミリの小さな
クモ。一度見失うと見つけ
るのが大変。