野鳥を撮る

講演と原稿書きの合間を縫って近くの山へ野鳥を撮りに出かけた。

いつものことながら不安の種は、今年もまた馴染みの野鳥たちがやって来ているだろうかということである。八ヶ岳山麓で越冬する鳥もいるが、東南アジアや中国大陸に戻っていく鳥も多い。どこももみな自然破壊と温暖化が進み、鳥たちにとって決して棲みやすい環境ではなくなっていることは間違いない。だから見慣れた野鳥たちがいつその姿を消すことがあってもおかしくないのだ。

しかし今年は、山の中に入ってカメラを構えていると、嬉しいことに、いつになく多くの種の野鳥たちが次々とやって来て、心を和ませてくれた。嬉しい限りである。どうにか、まだ環境破壊は致命的な段階まで至っていないようだ。それでも5〜6年前に比べるとサンコウチョウや アカショウビンなど幾種もの鳥たちが姿を見せなくなってしまったことも事実 である。観察できる野鳥たちの種類とその数が、私にとって我が国と周辺諸国の環境破壊のバロメーターである。

環境破壊は一方で、鳥インフルエンザという恐ろしい病気を生み出してしまった。病が流行しだしたら、こんなかわいらしい小鳥たちも病魔の餌食にされてしまうのだろうか! 十和田湖で白鳥の死体から鳥インフルエンザのウイルスが見つかったニュースを見るにつけ、胸が痛む。

私がアマゾン源流にまで出かけて野鳥の写真集を出版したり、ホームページで八ヶ岳山麓の草花や野鳥たちの写真を掲載し続けているのは、多くの方々に自然保護の大切さを知ってほしいからである。都会のアスファルトと鉄筋ビルの谷間で生活していたら、頭ではわかっていても、なかなか実感できないのが自然の大切さである。

ブログの梯子(はしご)の流れの中でこのページを覗かれたあなた。どうか、1度のクリックで見終わってしまわずに、こうしたかわいらしい野鳥たちの住処 (すみか)が年々破壊されている実態を心に刻んで欲しいものである。ご覧になるあなたは、今回の 2回の「春の野鳥@」シリーズを見るのにほんの数分間の時間をさけば済んでしまう。

しかし、撮影者はそうはいかないのだ。カメラをセットして待ちかまえていれば、野鳥たちが次々とやって来て、さあどうぞとポーズをとってくれるわけではない。今回の2回の掲載写真の撮影に 費やした時間は、まる7日間、50時間をゆうに超している。その点を頭に入れてご覧なって頂けたら幸いである。

最近、ハクチョウやコクチョウを棒で殴って殺してしまったり、チューリップやパンジーをなぎ倒す暗いニュースが紙面を飾っている。何とも嘆かわしい限りである。彼らには、殴られた時の鳥の痛みや咲き誇っている草花のけなげな心を 想像する心が消えてしまったのだろうか。だとしたら、もはや人間の皮をかぶった獣としか言いようがない。いや、獣はそんな無用な殺戮(さつりく)はしない。

あなたの大切な子供さんやお孫さんがそんな人間に成長しないように、私のホームページを役立てて頂きたいものである。きっと、生きた動物や小鳥たちに興味を抱き、生きるものの不思議さ、愛らしさに目を輝かせる大人に成長するはずである。私は、そう願って撮影し掲載し続けているのだから。

それでは、少しでも皆さんのお役に立つように、感動的な写真を撮りに、明日もまた、おにぎりと一緒に重いレンズをかついで、鳥たちに会いに行くことにしよう。

                     (撮影日 4月29日、30日、5月1日、2日 撮影協力・桑島献一氏)

 

 

 

 


山桜

標高2000mの八ヶ岳山麓
では、今ちょうど山桜が満開だ。

里の桜は艶やかで妖麗だが、
山桜を眺めていると心が和む。
 

 


メジロ

巣作りのために蜘蛛の糸を
ついばんでいる。

雄雌2羽で巣作りに励んで
いるこの時期は、比較的、
警戒心が弱く、写真撮影には
チャンスである。

全長12センチ

 

シジュウカラ

頬が白い活発な鳥で、
ツーピーツーピーと大きな
明るい声でさえずる

ヤマガラと並んで最も
ポピュラーな鳥の一種だ

全長 15センチ

キビタキ

今年は例年にましてキビタキの
姿が目につくように感じられた。

小さい鳥だが胸元のオレンジ
色が艶やかで、私の好きな鳥の
一つだ。

中国東部やサハリンから夏鳥
としてやって来る。
 

 

 

アカゲラ

腹部の赤と白のコントラストと
くるりとした眼が愛らしい。

後頭部が赤いのはオス

全長 23センチ

 

 

飛び立つアカゲラ

体調23センチとメジロや
キビタキに比べると倍近く
あるが、動きが素早くピントを
出すのが大変な鳥である。

今回は、幸運にもアカゲラ、
コゲラ、アオゲラの3ゲラを
掲載することが出来た。

 

コゲラ

アカゲラやアオゲラと同じ
キツツキ科だが、両者に
比べて体長が小さくて動きが
素早く、カメラマン泣かせの
鳥である。

全長15センチ
 

 

アオゲラ

体長はアカゲラより一回り
大きが、鳴き声や飛び方は
よく似ている。

後頭部の赤い斑点も一緒
だが、羽の色がグリーン色
している。

アカゲラに比べて見かける
割合がずっと少ない。

全長 29センチ
 

 

 

コムクドリの雌

フィリッピン諸島などから
夏鳥として渡来し、本州
中部以北で繁殖する。

標高が高い山中に
生息していたコムクドリも
最近は次第に低地へと
移動してきているようだ。

餌が不足してきているの
だろうか。

 


コムクドリの雄

ほとんどの野鳥がそうである
ように、左のメスに比べて
オスは、派手な衣装を
まとっている。

地味なメスに比べて、オスの
派手さが目立つ代表的な
野鳥の一つだ。


全長19センチ

リス

野鳥を探していると、突然
2匹のリスがやってきて、
赤松の幹の上で追いかけっこ
を始めた

 

桃の花

 

    ★  追記

春から夏にかけてフィリッピンなどから渡ってきて産卵し子育てするコムクドリであるが、5月20日朝に放映されたNHKニュースによると、新潟県在住の小池氏が30年に渡ってコムクドリの産卵の様子を調査し続けた結果、この間におよそ2週間、渡りの時期と産卵の時期が早まってきていることが明らかになったということである。

環境の専門家は、コムクドリがヒナに与える木の実や虫が必ずしもそのペースで早まっているわけでないので、個体数の減少に繋がるのではないかと心配だとコメントしている。八ヶ岳周辺で、コムクドリたちが低地に移動してきているのも、そのためかもしれない。それにしても、14日という日数の変化には驚かされる。

温暖化がかなりのペースで進んでいることを実感させられる貴重なデーターである。野鳥たちはこうして鈍感な人間に自然と環境の変化を教えてくれているのだ。自然とともに暮らすけなげな野鳥たちは、何とも鈍感で反応の鈍い人間どもにあきれかえっているかもしれない。                                                                                                                            0