5月から6月にかけての「モズの巣立ち」の様子を、3回シリーズでお伝えします。

《第1回》 モズが巣作りを始めた

5月の中旬、我が家の屋敷にモズの姿を見かけるようになった。注意してよく見ていると、どうやら雄と雌がいるようだ。モズは繁殖期から子育ちまでの期間を除くと、めったに「つがい」の姿は見ることがない。

ひょっとすると、巣作りをしようとしているのではないかと思って、二階の書斎から注意して眺めていると、藁(ワラ)や木ぎれを口にくわえて、盛んに屋敷の周りを囲 む「生け垣」の中に運んでいる。

これは間違いなく巣作りだ。うまくするとかわいいヒナタチの顔を見ることが出来るかもしれない。しかし、ちょうどそのころ『人間死んだらどうなるの?』の校正の最終段階と、エナガとチョウゲンボウの撮影が重な ってしまい、巣作りから産卵の様子を観察する暇がなかった。

現行の最終校正を終え、チョウゲンボウの撮影も一息ついた6月8日、二階から眺めていると雄と雌が交互に小さなアブラムシなどを口にくわえて「生け垣」の中に入っていく。どうやら 無事ヒナが孵(かえ)ったようだ。

三脚と600ミリのレンズを二階に運び、観察と撮影を始めた。ちょうどそのころNHKでモズの生態が放映されたのでご覧になった方も大いに違いない。そこでは、自分のなわばりを決め、 それを宣言するために梢(こずえ)に止まって高い声で鳴く場面が放映されていた。

よく見ると、まったく同じことが我が家のモズにも見られた。木の代わりに電線の上で 「グズグズグズ、キキキー」と甲高い声で鳴いている。自分の宣言したエリアに、他の鳥や人間、猫などの侵入者が近づいた時も警戒と威嚇(いかく)のための高鳴きする。

ヒヨドリなどがエリアに入ってくるとすごい勢いで体当たりをして追い出す。ある写真の仲間が昔、巣の中を見ようと近づいた際に、頭をつつかれ怪我をした話を思い出した。

ヒナは6羽

6月10日、垣根に近づき巣を探して見たが、雛の鳴き声が小さくて、その場所が特定できない。12日、垣根の反対側に回って見ると、隙間 が開いていて、そこから巣の中で眠っているヒナの姿を見ることが出来た。

私が巣の近くの葉をどけようとする音に気がついたヒナたちが、親鳥が来たのと勘違いしてクチバシを大きく開けてエサをねだり始めた。よく見るとヒナの数は6羽だ。まだ目が開いてない せいか、それぞれがバラバラの方向を向いて、口を開けている。この様子だとまだ孵化してから4〜5日位しか経っていないようだ。

モズは孵化からおよそ2週間で巣立ちするそうだから、ヒナの姿を巣の外で見るのは、10日ほど先ということになりそうだ。

                                                                                                                  

モズ

鋭いクチバシをもつ、体長20センチほどの小型の猛禽類。日本では北海道から九州まで幅広く分布。縄張りを持ち、それを宣言するた高鳴きをする。繁殖期には「つがい」で巣を作り、低木の茂み巣を作る。産卵期は3〜8月、卵の数は4〜6個。抱卵日数は14〜15日、巣立ちまで約14日。 
 

 

電線に止まるモズ

(左)雌 : (右)雄

 

 

山帽子に止まるモズ

(左)雌 : (右)雄

 

 

 

巣から飛び立つ雌

@

 

 

A

巣に入る雄

ヒナの糞をくわえて
巣から飛び立つ雄

顔立ちには猛禽類らしい
すごみがある。

 

 

給餌する雌

巣の周りの小枝を少し
とって巣の中を眺めて
みると、まだ目が開いて
いない6匹のヒナがいた。

 

給餌する雄と雌(手前)

最近目にすることが
少なくなったコオロギ

 

ネギ坊主の上に止まる蝶