saniriato(サニリアート)

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再びアンデス越え

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キタパライを後にした我々一行は、今回建設した二つ目の学校が建つマナワに向かう。

来たときと異なり帰りは川をさかのぼることになるため船足は落ち、水しぶきも頻繁に降りかかる。途中左手に綺麗な滝が見えてきた。往路はスピードが速かったためにあっという間に過ぎてしまったが、今度はゆっくりと鑑賞できる。

おおぜいの人々を乗せた船とすれ違う。彼らはアボリジニー(原住民)で、今日キタパライのさらに奥地で開かれる、彼らの年に一度の集会に出席する人々だという。

帰りも行きと同様、流れの急なところに来ると船を降り、しばらくの間、河岸を歩くことになる。水苔の生えた岩の上は滑りやすく、注意して歩かないと危険だ。

 教育の原点を見る!!

行く途中に立ち寄ったサニリアートを再訪する。河岸に船を止めると、子供達や村の人が駆け寄って来る。

学校には、村のほとんどの人が集まっており、歓迎をしてくれる。暑さで渇いた喉を、村の人達が差し入れてくれる果物でうるおす。ココナツの実の果汁の美味しいことといったらない。冷蔵庫で冷やされたのとは違って、手頃な冷たさで喉をうるおしてくれる。自然の采配の妙に、いたく感心する。

それに、焼き畑農場からとってきてくれたバナナが又ことのほか美味しい。バナナがこんなに甘い果物だとは知らなかった。人工的に色づけした輸入バナナに比して、自然熟成の味はこんなにも違うものだろうか。

古い校舎の中で、村人から校舎再建の要望を聞く。新しい校舎に並々ならぬ情熱を燃やす女性の先生が、最後に締めくって述べた一言が私の心を揺さぶった。

「私はこの村に赴任して以来、何年も、遠く離れた家族と会っていません。夫や子供達に会いに行く費用があったら、新しい学校の資金に廻したいからです。村の人々は私の心を知って、少ない家計の中からわずかづつですがお金を出してくれ、これまでに、新しい校舎を造るためにブロックを2000個ほど用意することが出来ました ・・・・・・・・ 」。

我が国にも僻地教育(へきちきょういく)という制度がある。少し不便な地域に赴任する先生には、この制度によって僻地手当が支給されている。こうしなければ、人里離れた僻地に赴任する先生がいないからだ。しかし日本の僻地には、電話もあれば電気もある。都会へ出ようとすれば数時間もすればいくらでも出掛けていける。

しかし、アンデスの僻地は桁違いの僻地である。勿論、僻地手当の制度などあろうはずもない。それでもこれらの地に、自ら志願して赴任する先生がいるのだ! そして、このような先生の熱き心に打たれて、すこしでも教育の受けやすい学校を作ろうと、貧しい財布の中から幾ばくかの金を出すお父さんやお母さんたちがいるのだ。

アンデスの地で、我が国では忘れられて久しい「教育の原点」を見た思いであった。

 約束

苦労してそろえた2000個のブロックといえども、彼らが求める3教室の新しい校舎には到底品不足である。基礎まわりだけでも、さらに4000個近いブロックを必要とするからだ。それに上屋(うわや)の建設資材はまったく用意されていない。彼らの自助努力だけでは、校舎再建は何十年も先のことになってしまうことは、明らかだ。

もはや決断するしかない。不安げな眼差しで見つめる村人に、資材の援助を約束することにした。「来春の新学期までに新しい校舎を作ろう!」、私の声が通訳のセサルを通じて人々の耳に届かぬうちに、以心伝心!大きな拍手と喜びの歓声が上がった。

先生は駆け寄ってきて、大粒の涙を流しながら私を抱きしめて放さない。よほど嬉しかったのだろう。早口でその喜びを語るが、スペイン語の出来ない私に分かるはずがない。

それでも、彼女の言わんとしていることはひしひしと伝わってくる。長い間、貧しい村の人々を説得して頑張り続けてきたことや、長い間の単身赴任の努力が報われたことを、必死に語りかけていることが伝わってきた。

僻地の子供たちに少しでもよい環境で教育をさせてやりたい、そんな一心で、これまで頑張ってきたのだろう。ひたむきなその姿に打たれて、思わず目頭が熱くなった。真新しい校舎を眺める時の、先生や村の人々の嬉しそうな顔を見られるなら、資材費など安いものだ。

総出で見送りにきた村の人々と、再会を約して、再びマナワに向かう。船上では、村人が差し入れてくれた果物に舌鼓(したづつみ)を打つ。船上の風に打たれながら食べたパイナップルの美味しかったこと。船旅の苦労も一気に飛んでいってしまうようであった。

 

 

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鬱蒼としげる熱帯雨林

 

川沿いの見事な滝を
眺める

 

集会に向かうアボリジ
ニー(原住民)の人々と
すれ違う

危険な箇所では船を
降りて歩く

 

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川岸に着くと、サニリアートの子供達が駆け寄って
きた

 

古い校舎に集まった村人は、先ずは国歌を斉唱する

どこでも子供達は
無邪気で可愛い

お別れの際、記念写真に収まる村人と子供達

 

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見送りに来た村人の手には、お土産の果物が一杯

 

オームを抱く少女

 

河岸で子供と村人

見送ってくれる村人たち