エジプト考古学博物館A

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 古代エジプトのグライダー     

 カイロ博物館が所蔵する1つ目のオーパーツは古代の「木製飛行機」である。1898年に、ギザからおよそ40キロほど南のサッカラにある、紀元前2世紀頃の墳墓から発見された、一見鳥のおもちゃに見える工芸品である。

 そのため、発見当初は木製の鳥類像として、特別の関心をひくこともなく博物館の地下室にしまい込まれていたが、ある学者が現代の航空機との類似点を指摘したことから、エジプト文化庁はこの発見を重大視し、特別調査委員会を設けて木製像を研究することになった。

 依頼を受けて詳細に調査した航空学の専門家たちは、翼の反り具合が揚力の原理にかなっており、さらに、翼の端の下方への反り方が機体の安定性を保っている点などから、これは古代の航空機のレプリカではないかということで意見の一致をみた。

 その調査結果を受けて、文化庁は、「古代の模型飛行機」と銘打って大々的に特別展示会を開催し、一時は一階の展示ケースの前に長蛇の列ができたほどであった。しかしこの2〜3年、なぜか展示を止めてしまったようで、前回と同様、今回も館内をいくら探しても見つけることができなかった。そこでガイドを通じて様子を聞いてみると、修理中のために展示されていないのだということであった。

 何としても一目見てみたかった私は、館長に直接面会して閲覧と写真撮影を頼んで見ることにした。

 しかし、考えるまでもなく、一観光客に過ぎない私が、事前の予約もなしに、また何のコネもなしでそのようなことが叶えられる確立はゼロに近かった。現にガイドは、たとえ面会できても写真撮影の許可が下りるのには、最低一ヶ月はかかりますよと、こともなげに言う。おそらくそれがこの国の常識なのであろう。

 しかし、他に手段がない私には、当たって砕けるしかなかった。その結果、およそ二時間にわたるねばり強い交渉の末、奇跡的に館長のマムド・エルダマーチン博士に面談が許されることになった。「思う念願岩をも通す」とは、こういうことを言うのだろう。

 館長室でしばらく雑談したあと、今回の旅行の目的を話し、木製飛行機を拝見し、許されるなら写真を撮影したい旨お願いしてみたところ、なんと撮影ばかりか、直接、手にして重さや大きさを測ることまで、許可していただくことができた。(「撮影並びに調査の特別許可書」はここをクリック)

 ガイドは、信じられないといった顔で目を丸くしており、秘書官も「このような特別の計らいを受けた人は、在野の研究家の中では、あなたたち以外いませんよ」と驚いたような顔で話していた。内心してやったりの思いで木内氏を見ると、彼も満面笑みであった。

 修理室に案内されると、びっくりするほど大きな金庫から、担当官が問題の品を取り出してテーブルの上に置いてくれた。木内氏とともにしばらく食い入るように見入った。確かに、専門家に言われるまでもなくこれは鳥には見えない。小さい頃に、竹や木で小型のグライダーを作ったことのある人が見たら、すぐにグライダーのレプリカだと指摘するに違いない。

 それも単にグライダーににているというだけではない。飛行物体としての形態をしっかり備えており、両翼の下方が丸みを帯びている点など飛行機の翼そのものである。また鳥との一番の違いは、尾が垂直に立っていることと、羽が鳥類の工芸品に見られるように反り返っていないことである。(添付の鳥の工芸品の写真を参照されたい)

 現にあとで立ち寄った資料室で台帳を見せてもらうと、表題は「鳥の形をしたおもちゃ」(作品番号は6347号)と記載されていたが、「尾は奇妙で現代の飛行機の尾翼によくにている」と付記されていた。まさにこれは、正真正銘のオーパーツであった。

 さっそく写真撮影を始めさせていただいた。さまざまな角度から撮らせていただいて、一段落したあと、恐る恐る手にとってみると、非常に軽い。材質を聞くと、レバノン杉だという。その後、所持したメジャーで寸法を測ると、両翼は18・5センチ、全長14センチであった。

 それにしても、今から2000年以上も前の時代に、このような飛行物体のレプリカが存在していたことが不思議でならない。修理室のメンバーにこれが何に使われ、どうして墓の中にあったのか聞いてみたが、誰もがわからないと首を横に振るだけだった。

 あまり熱心に見入っていたせいか、係の方が、金庫を開けて今一つの真新しいグライダーを見せてくれた。驚いてよく見ると、それは今見た遺品のレプリカだった。本物の隣に置いてみると、寸分変わらぬ大きさできれいに彩色が施され、もしもショーウインドウに飾られたら、グライダーの土産物に見間違えられてしまうほどの見事な出来映えであった。

 ここ数年、木製飛行機が展示室から姿を消していたのは、このレプリカを作るためだったに違いない。おそらくもう間もなく本物と一緒に館内に展示され、再び博物館の人気者になることであろうが、どうやら私たちは、このレプリカを目にする最初の部外者となったようである。

 特別の便宜を図っていただいた館長のマムド・エルダーマーチン博士に心より御礼を申し上げる。

 エジプトの古代遺跡から発見された「弾み車」

 オーパーツの第二弾は初期王朝期の墓から発掘された埋葬品であるが、読者は一体なんだと思われるだろうか?

 これを見て、誰もがまっさきに思いつくのは、扇風機か換気扇の羽ではなかろうか。実は、これも重要な「オーパーツ」の一つで、何かのエンジンに使われた「弾み車」のレプリカではないかと言われているものである。

 1937年に、サッカラ遺跡にある初期王朝時代のアネジブ王(紀元前3000年頃)の皇太子の墓から発見されたこの奇妙な工芸品は、大きさは、直径60センチ、厚さ10センチほどで、片岩と呼ばれる非常に軟らかい石でできていながら、三対象的にデザインされた羽と思われる部分の先端が、まるで金属でできているのかと錯覚するほど、きれいな曲線を描いている。

 現に、イギリス人のエジプト学者アルドレッドも「この物体はおそらく、元々金属製だったものを型取ったレプリカだろう」と述べており、さらに興味深いことに、アメリカのロッキード社の技術者は、その形態は自分たちが近年、宇宙船や機関車の新型エンジン用に試作した「弾み車」にそっくりだと語っている。

 ということは、初期王朝時代以前に我々にいまだ知られていない「未知の文明」が存在し、その文明が残した、精密部品の残骸を初期王朝時代の人間が手に入れ、遺物の何たるかも知らぬままに、その素晴らしさに感動し、加工しやすい片岩を用いてレプリカとして作ったということになってくる。

 それにしても、たとえレプリカとはいえ、エジプトに最初の定住農耕民が現れてからほど遠くない文明の創世期に、このような精密な三次元曲線によって形取られた工芸品を、一体、彼らはどんな加工技術をもって作ったというのだろうか?

                          拙著(『謎多き惑星地球』(徳間書店刊より
   

   著作権について

       写真の著作権はすべて製作者に帰属します。必要の時には必ず事前にご連絡下さい。

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 博物館最大のオーパーツ「グライダー」とそのレプリカ
レプリカについては世界初公開である。


このエジプト考古学博物館の秘蔵品に直接手を触れた日本人はいないようだ。

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   鳥の工芸品

上のグライダーと比べて羽の反り具合がまるで違うのがわかる。

 弾み車

館長のDr.Mamdouh Eldamaty と木内氏
(考古学博物館館長室で)