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欧州連合(EU)首脳会議

 

 

 
     


雪降る札幌での講演会を終え、昨日帰宅。

ここ数日、世界が注目したのが27カ国が参加した欧州連合(EU)首脳会議であった。この会議でドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が目指したのは、EU基本条約の改正であった。この基本条約の改正は英国の反対によって実現出来なかったが、以下の3点が盛り込まれたユーロ圏の財政規律を立て直す新たな構造改革案が決定された。

その主要点は以下の通りで、これによってEU 内では今後、第2のギリシャが出ないように取り組むことになった。

@    毎年の財政赤字を国内総生産(DDP)の3%以内に抑える目標を守れなかった国には、自動的に制裁が科される。

A    3%制限の目標を各国の憲法に記す

B    目標を守れなかった国に対しては、EU司法裁判所が予算のあり方を監視する

しかし問題は、各国の憲法改正まで盛り込んだこの改革案が英国を除く26カ国ですんなりと受け入れられるかどうかという点である。(英国はこの改革案を拒否している)仮にこの改革案が各国で承認され、財政赤字の拡大が抑えられ、欧州が市場からの信頼を得ることが出来るようになったとしても、問題はその結果がもたらす国民の不満と経済への影響である。

財政規律がより厳しくなり、司法裁判所の監視までされることになったら、国家、国民の主張は無きがごときとなる。それゆえ、3%以内を維持するために各国の財政支出はより厳しくなり、公務員の削減や賃金カット、さらには年金の受給開始の遅れや支給額の低下などは、避けられなく案って来る。

また、公共事業などが大幅に削減されることや国民の年収が減じるために更に経済は悪化し,GDPは低下し税収も落ち込む可能性が大きくなってくる。そのため更に対GDP比が大きくなり、財政支出の抑制度が増してくるという負の連鎖が加速化することになる。

そうなると、国民の強い忍耐力がない限り、来年の春以降に大規模なデモやストライキが起きてくることは避けられそうにない。そしてその動きは暴動の発生へと向かう可能性を秘めているだけに、もしその規模が大きくなれば政府の転覆へとつながり、やがてはEUからの離脱へと向かうことになる。

 

孤立化する英国と嫌悪されるドイツ

 こうした懸念とは別に、英国の孤立化とドイツに対する風当たりの強まりが新たな問題を引き起こしそうである

英国は今回の首脳会議において、全会一致が原則のEU条約の改正に拒否権を発動している。その結果、EU基本条約の改正を断念せざるをえなかったわけで、サルコジ大統領がキャメロン首相に対し露わに不快感を示したのもそのためである。

また、英国は新たな構造改革案にも27カ国で構成されるEUの中でただ一国だけ参画していない。その理由は、ドイツやフランスが主張する新たな金融取引税の導入が英国のシンボルでもある金融街シティーと通貨ポンドを弱体化させる可能性が大きく、国策に反すると判断したからである。

EU経済に対する依存度が大きい英国が、これから先EUを脱退することは考えにくいが、元々反ユーロ、反EU論が根深い英国だけに、ユーロ圏の債務危機の深刻化が進むにつれEU脱退を問う国民投票などが行われる可能性もあり、英国の孤立化が一段と進むことになるかもしれない。いずれにしろ、国民感情と一段と深まるEUとの亀裂の間に立って、キャメロン政権は難しいかじ取りを余儀なくされそうである。

 もう1点これから先に不安を残したのが、ドイツに対する嫌悪感の出現である。ユーロ圏内で絶対的な財政と経済規模を持つドイツは、ユーロ圏の財政危機を防ぐためフランスと協調し、欧州金融安定化基金(EFSF)の大幅増額やギリシャ、イタリアなどの財政危機国に対する厳しい監査体制の強化など様々な対応策を打ち出し、ついにはEU条約の改正までを成し遂げようとしてきた。

こうした政策は、ユーロ圏各国にとって、国家の主権と国民感情を無きものとしているように取られかねない。それは国民の心の中にくすぶる反ナチス感に火をつけ、ドイツへの嫌悪感と憎しみを再び生むことにもなる。そうした風潮が垣間見えたのが、英国で行われたメルケル首相をヒットラーになぞったデモや風刺漫画の登場である。

金融安定化基金や欧州中央銀行などへの出資の25〜30%を負担しているドイツであるから、EU圏の崩壊を防ごうと様々な政策を打ち出すメルケル首相の提案に対し、耳を傾け、その政策を受け入れざるを得ない各国であるが、国民感情はそれとは別の面を持っている。

それゆえ、自国が招いた財政危機、そこから生じる失業問題、年金の減額と支給年齢の先延ばしなどによる生活の厳しさ。こうしたことに対する不満のはけ口が、いつしか指導的立場にあるドイツ国家に、メルケル首相に向けられてくる可能性は大である。

ドイツやフランスが先導役をして推し進めてきたこれまでの政策、ギリシャやイタリアへの資金援助、欧州中央銀行(ECB」による国債購入策などは、どれもみな足下の不安を和らげる「アメ」であった。しかし、今回のサミットで決定した構造改革案は痛みを伴う「ムチ」である。

したがって、痛みを味わう国の国民の目から見ると、政策の立案者であるドイツやフランス、特にドイツは鞭打つ加害者のように感じられることになる。それ故、春先以降、こうした感情は日増しに強くなって来ることが予測されるが、こうした反ドイツ、反メルケル的な感情に対してドイツ国民はより結束する民族であるだけに、言われなき反感に反発したドイツが、それならギリシャやイタリアに対する財政支援はもうやめようと考えた時、EU圏の崩壊と世界経済の危機が発生することになる。

それはまさに1920年代後半にドイツが他国の金融機関救済から手を引いたことから始まった世界恐慌の再現である。歴史は繰り返すと言うが、80年前を振り返ると、欧州の経済情勢やドイツの置かれた立場があまりに似てきている点が気になるところである。

 

次回に続く