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  異常気象がもたらす悲劇
   アフガンのタリバン戦闘員が減らない理由

 
 

 
 


3年前まで小麦を栽培していた畑は不毛の地と化してしまった。

 

 
 

 
 


こんな状況ではとても作物は作れない。

 
 


2日からスペインのマドリードで始まった気候変動に関する国際会議・COP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)。会議は当初南米のチリで行われる予定であったが、デモの激化で急遽開催地がスペインのマドリード変更になった。

チリの会議に参加することになっていた16歳の高校生・環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは、CO2を発生する飛行機を避け3週間かけて大西洋をヨットで渡り会議に参加。

そんなことが話題になっているCOP25であるが、私が気になったのは会議の前日に国連の事務総長が語った「気候変動は長期的な問題ではなく、今すぐに対処しなければならない緊急的な危機である」と温暖化対策の緊急性を 強く訴えた発言と、会議に参加した国連の科学者が語った「1980年代の半ば以降10年以上にわたって毎年、前の年より気温の高い状態が続いており、その流れが終わる気配がない」という発言であった。

確かにこれまで私がHPで記して来たように、熱波や洪水、干ばつ、大雪などこの十数年間、世界各国が次々と襲われている自然災害の被害は、その頻度と規模を増す一方であるが、それが恵まれない 国や人々にとって致命的な状況と化して来ている実態については、十分に認識する機会がなかった。

今回、それを知ることになったのが先日、アフガニスタンの惨状を伝えていたNHK・BS局の「キャッチ「世界のトップニュース」」であった。

アフガニスタンは人口の80%が農業に従事している国である。その国が今干ばつの被害に遭遇しており、その規模はなんと国土全体の60%に及んでいるのである。私は数年前からアフガニスタンでは気候変動による気温の上昇で、春から夏に大量の雪が急激に融けるようになったため、雪解け水が川に流れ込み、これまでになかった規模の洪水が頻発していることは知っていた。

それなのに、なぜ今そのアフガニスタンが干ばつの被害に見舞われているかというと、頻発する洪水によって用水路などの灌漑施設が荒廃する事態となる一方で、草木が皆流されて農地が保水力を失って乾燥し、干ばつ状態と 化してしまっていたようなのである。そして、その被害にあっている農地は60%に達していたというわけである。

 

出稼ぎの息子がタリバンに参加してしまった一家

 

 
 

 
 


農業を営んでいたが干ばつで離農。「一緒に農業を支えて
くれていた息子が都市部に出たまま帰って来ない」と語る父親。

 

 
 

 
 


その息子は都市部ではなく北部の山岳地帯にいた。

 
 

そうした農家の被害状況を伝える番組の中で、農業を営んでいたが干ばつで農業を手放すことになった年配の男性が、一緒に農業を支えてくれていた息子が都市部に出稼ぎに出てしまったため、今は残された嫁と孫たちと一緒に厳しい 日々を送っているのです、と語っていた。

私がショックを受けたのは、息子さんの行き先を追っていたテレビ班が映し出した映像であった。そこには、都市部で働いているはずの息子さんが、北部の山岳地帯で反政府武装勢力・タリバンの兵士の一員となっていた驚きの姿が映されていたからである。

どうやら青年は仕事が見つからない状態が続いていた時、タリバンに給料がもらえると誘われてメンバーに入ったようである。青年は「干ばつが終わって再び農業ができるようになったら、家に戻りたいです」と語っていたが、上段に記したように、 残念ながら、それはかなわぬ夢のようである。

今アフガニスタンがタリバンなど過激派組織によるテロで、最悪の状況と化している実態の裏には、温暖化による気候変動で農地が荒廃するという事情があったのである。となると、国連の事務総長や学者が語っていたように気温の上昇傾向がこれから先も一段とその頻度と規模を増すようなら、タリバンやIS (イスラミックステート)などの過激派組織は姿を消すどころか、これから先、ますますその規模を増して来ることになりそうである。

そして、そうした状況の悪化によって一番泣きを見るのは、政府軍と過激派組織との戦闘で家を失った人々や自爆テロなどに巻き込まれて働き手を失った家族である。アフガニスタンの大規模な避難キャンプには、いま30万人を超す人々が避難しているようであるが、番組では、その中で夫がタリバンによって殺害されて収入源を失い、幼い5人の子供たちとキャンプに避難しているホマールさんの厳しい状況を伝えていた。

 

夫を失い収容所に入った母親が、幼子を嫁がせる悲劇

 
 

 
 


アフガンには30万人の避難者を収容する大規模な避難キャンプが幾つもある。

 

 
 

 
 


そうした非難キャンプで、夫をタリバンに殺された
ホマールさんは5人の子供と暮らしている。

 
 

 

ホマールさん一家の今の収入源は11歳の長男がごみ拾いで得ている1日当たり1ドルだけ。そのため、最低限の暮らしを強いられているようである。驚いたのは、そんな暮らしから少しでも楽になりたいと 、お母さんはあることを決断することになったことである。それは、5歳になったばかりの 幼い娘を嫁がせるということであった。

なぜそんなことをするのかと思ったら、嫁にやることによって日本円で40万円ほどの結納金がもらえるからであった。娘さんにはまだ嫁に出すことは伝えてはいないようであるが、それを聞いた5歳の娘さんがどれほど悲しむか想像しただけで、胸が苦しくなってきた。

それにしてもなんともはや悲しいことである。自然災害の多発が過激派組織・タリバンを生み、そのタリバンとの戦いに巻き込まれた人々が一家の稼ぎ手を失うそうした悲惨な事態に遭遇した人々の、生き抜くための最後の手段が5歳の幼子の嫁入りであったというわけである。

米国が9・11事件の発生後に事件に関わったアフガニスタンのタリバンを撲滅するという名目で、ブッシュ大統領が行ったのがアフガン戦争。しかし、その結果は悲惨で、過激派組織はアフガニスタンだけでなく世界に広がり、各国でテロを引き起こし続けている。そんな状況下、今月3日の感謝祭の日、トランプ大統領が何の前触れもなくアフガニスタンを訪問。その目的はタリバンとの休戦協定を進めるためであった。

9・11事件以来、長年にわたって米国がやって来たことは、タリバンやIS(イスラミックステート)といった過激派組織を拡大させ、世界中にテロという残虐な行為を広めることになったのだ。大体テロなどという言葉は9・11事件以前には聞いたことのなかったことを考えれば、ブッシュ大統領たちが世界にばらまいた恐怖の種が、どれほど罪深いものであったのか理解できるはずだ。

来年の大統領選挙に向けた外交実績とするために、おのれの国のまいた悪の種を刈り取りに行ったトランプ大統領であったが、これから先、タリバンとの長期的な休戦協定が結ばれることは、ありえないと思っている。それどころか消滅させたと言っているISの復活もそう遠からずして始まることになるはずである。

異常気象が年々歳々勢いを増すことによって、一番に被害を受けるのが社会的弱者であり、彼らのうっ憤のはけ口や収入源が過激派組織や反政府武装勢力となってしまったからである。

 
 

 
 


ごみ集めで1日1ドルを稼ぐ11歳の長男

 

 
 

 
 



来月には嫁ぐことになっている5歳の長女

 

 

追記

本文でアフガニスタンでは干ばつ化した農地の面積が全体の60%に達していることを記したが、60%にとどまっているのは、日本から出向している中村医師 たちが医療活動のかたわら、用水路などの灌漑施設が荒廃する事態を防ぐため、様々な手段を農家の方に教えて来ていたからであった。

今回の記事を書き上げて昨夜テレビをつけたら、なんとトップニュースでその中村医師やそのスタッフたちがアフガニスタンで暗殺されたというニュースが流れており、あまりの偶然に驚かされると同時に大きなショックを受けた。

アフガニスタンのガニ大統領や駐日アフガニスタン大使から 、中村医師の農業の改善に尽くされたことに対する深い感謝の言葉が語られていたが、タリバンからも発表があり、中村医師はアフガニスタンにとってかけがえのない貢献者であったゆえ、自分たちが犯行に及んだのではないことが伝えられていた。

私も中村医師の為された功績について心から感謝し、ご冥福をお祈りさせて頂く。

 

 




 

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