横行する中国の人身売買
 

 


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年間20万人の幼子が失踪

 
 

 
 


河南省 ・ 鄭州市で開かれた幼子を誘拐された親たちの集会 (「国際報道2015」より)

 
 

今中国ではある社会問題が発生しており、赤ん坊や幼子を持つ親を震撼させている。それは横行する子供の誘拐事件である。なんと中国では年間20万人の子供が失踪し続けており、赤子や小さな 子供が誘拐される事件が後を絶たないのである。

なにゆえそのような事態が発生することになったのかというと、1979年から人口抑制のため共産党政権が始めた「一人っ子施策」により、原則として 一家に一人の子供しか持てなくなってしまったからである。初めて授かった子供が男の子ならいいが、もしも女の子だとすると嫁に出したら、両親は面倒を見てもらう子供がいなくなってしまう ことになる。

高額所得者は罰金と引き替えに第2子以降も子供を持つことが出来るが、罰金が高額のため低所得者の多い農村部ではそれが出来る家庭は極めて少ない。その農村部においては 、肉体労働を積極的に手伝ってくれる男子が出産されないと、農作業が成り立たなくなってしまう。中には子供を産めない両親が子供を求めるケースもあるようだ。

そうした事情から主として男の子を買い取るケースが発生し、子供を誘拐し売り渡すことを生業とする犯罪組織が出現することとなったのだ。今は人身売買のネットワークまでが存在しており、少しお金に余裕がある農家はネットを通じて子供を買い取るケースが増加 し続けている。

因みに人身売買における子供一人当たりの値段は、男の子供の場合は5万〜6万人民元〈100万円〜120万円)だというから、農家にとっては厳しい額だが、背に腹は代えられぬというわけである。売買の対象となっている子供は、生後間もなくの赤子から5〜6才 児まで。

問題は一人っ子を誘拐された両親の気持ちである。一人しか産んではいけないと言われて、大切に育てた我が子を誘拐された両親の気持ちはいかばかりか。夜も眠れぬ日々が続いていることだろう。 先週、中国内陸部の河南省 ・ 鄭州市(ていしゅうし)の駅前では、そんな気持ちの親たちが集まって、行方不明の子供の手がかりとなる情報を求める集会が開かれていた。

 
 

 
 


一人っ子を誘拐され、6年間にわたって農村部を3輪車で探し続けている父親

 
 

6年前に、寝ている間に窓から侵入した賊に、一人息子を誘拐された35才の伍興虎(ごきょうこ)さんは、今も3輪車に乗って農村地帯を回って子供を探し続けている。その様子をテレビで見ていた私にとって一番のショックだったのは、チラシを配って情報を得ようとする伍興虎さんの回りに集まった農村部のある女性が、テレビのインタビューで「農家の人が子供を買うのはやむを得ないのよね!」と語った一言であった。

「農家を経営していくのには男の子が必要なのだから、金で子供を買うのは仕方がないのだ」というわけである。あの広い中国を6年もかけて探し歩いている親の前で、よくもそんな非人道的な言葉を語れるものだと、ただただ 、あきれ返って言葉を失ってしまった。

さらに驚いたのは、偽情報を流して伍興虎さんから報奨金を取ろうとする輩や、急いで金をよこさぬと子供の命はないぞ!と脅迫する輩がいることであった。 子供を失って悲嘆に暮れる親から金をむしり取ろうというのだから犬畜生以下。我々の常識からすれば信じられないことであるが、 中国社会ではそれが現実なのだからどうしようもない。

誘拐される子供の数は200人や2000人ではない、200、000人である。おそらくこれまでの犠牲者の数は1、000、000万人を越していることだろう。ということは、それだけの数の人間が、相手の苦しみや悲しみを無視して、実際に子供を買い取って平気で暮らしているというわけだ。

さらに恐ろしいのは、中国の社会そのものがそうした状況を見て見ぬふりをしていることだ。声を上げない国民も国民なら、国家的対策を実行しない政府も政府である。これほど  「自己中心、己さえ良ければ」  の人間が跋扈する国は、世界広しといえどない。やはり中国人は特殊な心を持った人々が多く集まった国のようである。 こんな国が世界の覇権国になろうとしているのだから、なんとも恐ろし限りである。

伍興虎さんをはじめ一人でも多くの両親が、一日も早く幼子に巡り会うことを祈りたい。




 

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