要因は表面を覆う「すすの微粒子」

 
 

 
 


北極海を行く原子力砕氷船ヤマル号。 私が北極点に立った2002年にも
氷の割れ目は随所で見られた。 溶解が進んでいる現在は割れ目はさらに拡大しているようである。

 

 

北極海の氷の中から大量のプラスチックの粒子が発見されたことから、ヨーロッパの海洋調査研究者や生物学者から、プラスチックの使用に対する警告が発せられたことは、先の「海水汚染の危機」でお伝えした通りである。 今回は同じ北極海で進む「すすの微粒子」による「氷の溶解」に関する警報である。

北極で氷の研究に携わっている日本やドイツ、デンマーク、オランダの研究チームが、いま北極ではたくさんの黒い氷が発見されており、気候変動に破壊的な影響を及ばしていると警鐘を鳴らしている。 黒い氷と言うのは、すすの微粒子が表面に癒着した氷のことである。

黒色の「すす」が氷に癒着すると、日光は氷の表面で反射されず黒い微粒子を通して氷に吸収されることになる。 その結果、氷は温度が上昇し溶け始める。 そうして空いた巨大な穴を上空から見ると、まるで月のクレーターのように見えるようである。

北極のすすの微粒子の増加は、氷棚を溶かして巨大な流氷や氷山を生み出し遠洋に流し出すため、北極海の氷床面積を減少させることになる。 それは また、温暖化現象を加速させるため、さらに氷棚や流氷、氷山の溶解を早めるという悪循環を生み出すことになっているのだ。 

 
 

 
 


氷に空いた巨大な穴は上空から見ると月のクレーターのように見える。

 
 

こうした状況を発生させている黒い微粒子のもととなる「すす」の増加の要因については未だ正確なことは分かっていないが、次の3つ の可能性が指摘されている。

@ 気候変動による草原火災の増加。
A 北極海を航行する船舶量の増加。
B 中緯度地域や北米、アジア地域からの飛来。

@についての代表的な事例として、最近起きたグリーンランド西部の数平方キロメートルに及ぶ草原火災による影響が指摘されている。 こうした火災は温暖化現象の影響で氷が溶け地肌が露出するようになったことが要因となっている。

こうして発生し始めた厳寒の地、グリーンランドや北シベリア地域の草原火災や森林火災は、 温暖化による氷の溶解をさらに加速させる悪循環に陥っている。 一つの火災が次なる火災を発生させる「火災の連鎖反応」を引き起こしているのだ。

一方、これまでHPで何度もお伝えしてきたように、米国・カリフォルニア州で頻発している森林火災も、Bの大きな要因となっていることは間違いなさそうである。 温暖化が世界各地に異常乾燥をもたらし、そうした異常気象が森林火災を頻発させて、さらなる温暖化を加速させているのだ。

こうして見てみると、トランプ大統領の温暖化対策を盛り込んだ「パリ協定」からの脱退は、北極圏の氷の溶解を推し進めることにつながるだけに、地球という水と氷に覆われた美しい惑星を危機的状況に追い込む要因の一つとなっていることは間違いなさそうである。 

自国第一主義を進める不動産屋・トランプ大統領には 、北極海や南極における氷棚の溶解などどうでもよいことだろうが、巨大な氷河が轟音と共に溶けていく凄まじい光景が、遠からずして自国の滅亡に繋がることを教えてやりたいものだ。

 
 

 
 


北極の氷の研究に携わっている研究者が手にしているのはすすの微粒子の集まり

 

 
 

 
 


2002年に撮影した北極海の氷棚。

氷棚(上)は降り積もる「すすの微粒子」によって温度をあげ、
下のように騒音と共に溶けて海面に向かって流れ落ちる。

 

 
 

 
 


(ドイツZDFテレビより)

 

 
 

 
 


私が訪ねた2002年の段階でも、北極海を覆った海氷はあちらこちらに
穴があき始めていた。今こうした氷の穴は遥かに巨大化して来ているようである。