イランで異例な反政府デモ
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イランで異例な反政府デモ
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中東情勢の混乱の導火線となるか

 
 

 
 


28日から年末にかけて、イラン各地で異例の反政府デモが行われ
その動きは年を越した1日も続いており、次第に激しさが増して来ている。

 
 

比較的穏やかであった年末の世界情勢。 しかし、28日からイラン各地で行われた反政府デモは、中東における宗派間の紛争が厳しさを増して来ている中だけに、波乱の2018年を予知するかのようで、不気味である。 デモは年末から年初にかけて次第に拡大されて来ており、すでに一連のデモでの死者は13人に達している。

イラン経済は核開発に対する反発で欧米諸国を中心に国際社会から制裁を受け、長期間にわたって低迷し続けて来た。 それが、2015年に実施された核開発の大幅な制限の見返りに、制裁解除が進み経済の復興が期待されていたものの、期待されていたほ どに景気は回復されず、市民の間に不満が募っていた。

特に今もなお失業率が25%を超す若者などの就職難に対する不満に物価高騰が追い打ちをかけ、デモが事実上禁じられているイランでは極めて珍しい反政府デモが発生する事態となったのだ。 今回のデモが生活の改善を訴える単なる反政府デモではなく、最高指導者ハメネイ師を頂点とするイスラム体制そのものへの批判デモでもあったことは、大きな驚きであった。

インターネット上では、首都テヘランの大学で若者たちが「 独裁者に死を」などと叫び、最高指導者ハメネイ師を批判する動画や、各地のデモ隊が路上に飾られた同師の写真を引きはがす映像も投稿されていた。 最高指導者に対する批判は不敬罪に相当し死刑になる犯罪であるだけに、それを市民が平然と叫んでいるところから判断し、 今回の抗議行動がこれまでにない異常なものであることは明白である。

私が今回のイランにおけるデモをなにゆえ重要視したかと言うと、 米国によるエルサレムの首都承認で中東諸国が今や一致団結しなければならない時にも拘らず、スンニ派とシーア派の対立が激しさを増して来ており、両派の代表国であるサウジアラビアとイランの国内情勢に混乱が発生すれば、中東全体を巻き込んだ宗派間戦争に発展する恐れがあるからである。

 
 

 
 


首都テヘランでのデモでは警護兵から放水が行われている。

 
 

スンニ派の盟主であるサウジアラビアでは、高齢のサルマン国王(81歳)からの権力移譲が行われた息子のムハンマド皇太子が、現職閣僚や王族200人を拘束するという異例の事態が発生し、「サルマン国王他の王族」間の対立が国を2分する動きに発展することになるのではないかと言われている。

そんな中、一方のシーア派の代表国家であるイランで、最高指導者を糾弾するデモが起きたことは、イランもまたサウジアラビア同様、国を二分する体制派と反体制派の争いが本格化することになりかねない。 問題は、こうした国内の内紛を収束し国民を一本化するために、両国が対立する宗派国との戦争に進むことである。 宗派間同士の戦争となると、中東の全ての国が巻き込まれることになる可能性が大きいだけに、一大事である。

ただ一方で、それを喜ぶ国もあるのだ。 それは他ならぬイスラエルである。 イスラエルにとって中東でのイスラム国同士の争いは何よりも喜ばしい話であるからだ。 だからこそ、前にも記したように、イスラエルはイスラム国家の中でもどちらかと言うと穏健派のスンニ派と手を握り、シーア派のイラン叩きを扇動しようとしているのである。

さらに問題なのは米国の動きである。 エルサレムをイスラエルの首都と認めたトランプ大統領は、ユダヤ教徒の娘夫婦と心を一つにしてイスラエル寄りの政策を行っているが、イランでの反政府デモ が拡散しているのを見て、早速得意のツイッターに 「抑圧的な政権は永遠に続くことは出来ない。イラン国民が選択に直面する日が来るだろう。 世界は見ている」  と書き込んでいる。

更に不安なのは、トランプ政権は2年前に達成したイランとの核合意を米国にとって意味のないものだと、反故にしようとしている点である。 もしもそうなると、イラン経済は更に厳しくなることは避けられないだけに、市民の反政府行動は激しさを増すことになりそうだ。 

その結果、サウジアラビアとイランの代理戦争と化しているイエメンの紛争が、中東全体に拡散されるようなことになれば、サウジ側に付く米国と、イラン側に付くロシアとトルコ、中国との対立は大きく一歩を踏み出すことになるかもしれない。 どうやら、2018年は北朝鮮の動きだけでなく、中東情勢からも一段と目が離せな くなりそうである。

 

 


シーア派のイランの最高指導者・ハメネイ師

 

スンニ派のサウジアラビアのムハンマド皇太子

 

 




 

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