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  釣瓶(つるべ)が水面に当たる時

「秋の日の釣瓶落とし」、秋の日の暮れやすさを歌った一句であるが、井戸の中をまっすぐに落ちていく釣瓶(つるべ)がまもなく底に当たろうとしている。その後には、水面から花火のような水しぶきが上がることだろう。

日経平均で言うなら毎日が7%を超す500円前後の下げが続いているこの数週間、まさに釣瓶落としの状況である。今日もまた朝方、250円近く上昇したものの、それから750円近く下落して、結局、終値は 490円安の7162円、6年前のバブル崩壊後の最安値をいとも簡単に抜いて、実に26年ぶりの安値である。

かねてからこうした事態を予測し、警鐘を鳴らし続けてきたにもかかわらず、聞く耳を持たない多くの投資家諸氏が今青ざめて、顔面蒼白の状態を迎えている。今年の初めに、2008年の株価予測を1万5000円から2万3000円と予測していた有名なアナリストが昨日のテレビでは、なんと、今年の終値を5000円から1万円ですと、へーへーとした顔で述べていた。 まさにお笑いである。

新聞やテレビに出ている経済評論家やアナリストの99%が皆この類(たぐい)である。彼らは競馬や競輪の予想屋とちっとも変わらないのだ。そんな輩の言を信じて株やドル債券を買い増ししてきた投資家も投資家であるが、評論家やアナリストたちの罪は重い。

証券会社といえども同じ穴のムジナである。野村證券であろうが大和証券であろうが、皆さんに接する社員の経済に対する先見性などほとんどがゼロに等しいと思っておいた方が良い。 在職当時、私が時々教えてやる情報に驚いていたほどだから、その程度が知れよう。

株式投資や債券運用、為替相場のまっただ中にいた私が言うのだから間違いない。2兆円近い運用資金を抱えた大口顧客でさえ、取引先の証券会社から役立つような情報などまったく入らぬに等しかった のだから、一般の投資家に先見性のある情報がもたらされるはずがない。私はこれまでに、証券会社から進められた投資で儲(もう)かったなどという話を聞いたことがない。 彼らは会社の方針に沿った商品をただ勧めているに過ぎないのだ。

経済紙の雄たる日本経済新聞とて同じこと。皆さんには結構な記事が掲載されているように思えるだろうが、よく見てみれば皆後追いの記事ばかりである。そのレベルは、終わった野球の結果を屁理屈 をつけて解説しているプロ野球解説者と少しも変わらないのだ。ウオール街から流された情報を鵜呑みにして本社に送るしか能のない記者ばかりだから、当然といえば当然である。

その証に、3ヶ月、6ヶ月前に、いや1ヶ月前ですら、今日の状況を先見性と勇気を持って的確に予見した記事など一遍たりとも見当たらなかったではないか。それゆえ、独自で勉強し、政治や経済の裏をしっかり掴んでいない投資家にとっては、株式投資や債券投資が儲かる、損するは運次第、まさに丁半博打(ちょうはんばくち)でしかない のだ。なにを隠そう、これがこの世界の実体なのである。

どうやら、いよいよその丁半博打相場の潮時が訪れたようである。三菱UFJ、三井住友、みずほの三大銀行株がそろってストップ安で終わった今日の相場がそれを告げているようである。1兆円の自己資本増強を余儀なくされてあわてふためいている天下の三菱が、世界金融の「救世主」ともてはやされて、アメリカのメガバンクに1兆円近い 資金を融資したのは、わずか2週間前のことである。

その投資先の銀行株は急落し、既に数千億円近くが消えてしまっている。株主から、三菱UFJ銀行の経営者は、まったく先 をの見通せてなかったと言われても致し方あるまい。 他の2行とてやっていることは一緒である。経営に参画する能力も意欲もないのに、数千億、1兆円の資金を投入するなど、狂気の沙汰である。これでも銀行の経営者かとその頭の中を疑いたくなってくるのは、私だけではないはずだ。

 

 

 

 

暗い先行きを暗示するニュースが次々と流れてくる。

イギリスの7〜9月期のGDP(国内総生産)の成長率がとうとう前期比マイナスとなってしまった。これは単に終わりの始めに過ぎず、これからは期を追うごとにマイナスの幅が大きくなっていくに違いない。

ドイツの自動車大手のダイムラー社が12月11日から1ヶ月間、生産を中止することになった。1ヶ月間休業と言うことはただごとではない。1ヶ月間にわたって天下のダイムラー社が車を1台も作らないのである。来年の新車販売台数の大幅減が思いやられる。

恐らく20〜30%を超す売り上げ減は免れないであろう。08年の7〜9月期の当期利益が前期の6分の1(260億円)に急落していることを考えると、来期以降の決算が大幅なマイナスに転じることは火を見るより明らかである。

更に、フィリッピンの株式市場が27日、市場閉鎖に追い込まれた。このまま下落相場が続くようなら、発展途上国の市場閉鎖は今週から来週にかけ、次々と発生することになるに違いない。それより、欧米、中国、それに我が国の市場とて何処まで持ちこたえられるか分からなくなってきた。下手をすれば来月半ば過ぎ当たりから市場閉鎖が主要国の中でも発生することになるかもしれない。

先を見通す人々の予測で共通しているのは、11月半ばから年末にかけて、また年初から2月にかけて市場はさらなる大激変に見舞われることである。それは、これまでの常識や経験則がまったく通用しない時代の到来を示唆している と考えておくべきである。

具体的にどういう事態に立ち至るのか、それにどう対処したらよいのかは、各自が少しばかり頭を働かしてもらえればすぐに分かるはずだ。「未曾有の金融危機」、「かってなく、これからもない危機」という言葉を頭に入れて考えてもらえれば、自ずとその答えは出てくるはずである。

マウリツィオ・カヴァロ氏の講演会とインタビューが終わった来週には、「終末」のさらなる予兆が始まっているかもしれない。 私はこれから上京し、15万光年の彼方からやって来ているというクラリオン星人の語る、地球と人類の近未来に耳を傾けてくることにする。

 

 

 

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